205
風害における風の累積的影響の検証
谷川直太
(九大生資環),
加治佐 剛,
溝上展也
吉田茂二郎
森林における風害は日本をはじめ多くの国で発生しており,森林管理,林業経営上の大きなリスクの一つとなっている。既存の研究では,風害の要因解析や力学的な演繹によって風害発生メカニズムの解明が進められている。しかし,実際の風害における立木への風の影響に関して,突風による立木への1度の荷重が重要なのか,長時間,継続的に強風に曝されることによる累積的な影響(例えば,材の疲労現象)が重要なのかは,いまだ明らかとなっていない。そこで本研究では,1991年の台風19号による日田市での風害を対象に風況モデルを用いて,風害発生に対する風の累積的な影響を検証した。

206
植栽後49年経過したスギ無間伐林の林分構造とその評価
井上千種
(九大生資環),
吉田茂二郎,
溝上展也
20年生時から49年生時までの調査結果を収穫表と比較することで、スギ無間伐林の林分構造を明らかにした。また無間伐林の物質生産機能や水源涵養機能、さらに風害、雪害への耐性について考察した。はじめに林分構造については、無間伐林の立木は胸高直径が小さく、林分においては本数密度が大きく、材積合計が大きかった。次に物質生産機能の評価として、無間伐林の全立木の材価を算定し、収穫表の50年生時の資料から算出した材価と比較した。また2時点のうっ閉率を比較し、無間伐林の水源涵養機能の経時変化について考察した。さらに形状比、収量比数、樹冠長率を、文献から得られた基準値と比較した。ここから無間伐林の風雪害への耐性について考察した。

207
九州南部のモミ・ツガ・アカマツの健全度について
溝口太郎
(九大農),
吉田茂二郎,
溝上展也
九州におけるモミ・ツガ天然林は、減少傾向にあり、現在では限られた地域にのみ見られる貴重な森林生態系である。霧島におけるアカマツを含むモミ・ツガ天然林の健全度が低下しているとの報告があるが、その原因については、樹齢やシカの食害、大気汚染など様々考えられ、明らかになっていない。そこで、九州南部の霧島・樫葉・広野・屋久島の4地点において、モミ・ツガ・アカマツの健全度調査を行い、原因解明のための基礎データ収集を図った。調査で得たデータから、霧島、屋久島において健全度の低い個体が多いことがわかった。その結果と、過去に行った霧島での継続モニタリングの結果を合わせて、今後の動向について考察したので、報告する。