213
モウソウチクにおける節間長の解析
井上昭夫
(熊本県大環境
共生),
倉岡健太朗,
北原文章
モウソウチクにおける節間番号と節間長との関係について解析した。熊本県玉名郡和水町のモウソウチク林において,様々なサイズのモウソウチクを50本伐採し,節間長を測定した。節間番号については,総節間数によって相対化した(以下,相対節間数)。節間長については,(1)最大節間長によって相対化(以下,相対節間長),(2)地際からの累積節間長を総節間長によって相対化(以下,相対累積節間長)という2種類の方法によって相対化した。相対節間数と相対節間長との間には明確な関係はみられなかった。しかし,相対節間数と相対累積節間長との関係は,個体サイズとは無関係に1本のシグモイド型曲線によって表現できた。いくつかの曲線式によって回帰したところ,3次多項式が最も高い適合度を示すことがわかった。

214
スギ同齢単純林における枝下高推移モデルの再検討
溝上展也
(九大農),
吉田茂二郎
針葉樹同齢単純林の間伐をいかにすすめていくかについては古くからの重要課題であるが、最近になって、樹冠長率に基づく密度管理が推進されるようになってきた。報告者・溝上は、1996年に開催された日本林学会九州支部会第52回大会において、樹冠構造に基づくスギ人工林・枝下高推移モデルに関する報告を行い、間伐直後を含む枝下高の時間的推移が柔軟にシミュレーションできることを示し、うっ閉林を対象とした既存の枝下高モデルとの相違を明らかにした。本報告の目的は、既に報告済みの枝下高推移モデルを再検討し、樹冠長率に基づく密度管理への応用を試みることである。特に、地位の違いに着目し、地位の違いよる樹冠長率の変化速度や密度管理への影響について検討する。

215
長崎県内ヒノキ人工林に対応した細り表の作成
前田 一
(長崎県農林技セ),副山浩幸,
久林高市,
春海賢一,
七里成徳
近年、木材価格の低迷や材の需要が多様化したことなどから、長伐期施業へと誘導されつつある。昨年の本研究発表会において、長崎県の主要造林樹種であるヒノキにおける長伐期施業に対応した地位指数曲線および林分密度管理図の調製について報告している。一方、現場からは、ha当たり幹材積だけでなく、それぞれの立木に対して直径を指標とした新たな人工林管理手法が要望されている。そのためには、長伐期施業に対応した細り表の活用が重要である。そこで本研究では、長崎県内のヒノキ人工林、特に高齢林分から収集したデータを用いて調製した本県独自の細り表の作成について報告する。

216
樹高推定が森林蓄積量推定に与える影響 −福岡演習林CFIを対象に−
西田由佳
(九大生資環),
加治佐 剛,
溝上展也,
吉田茂二郎
1992年の国連環境開発会議において「持続可能な森林経営」が提唱され、その対応としてわが国はモントリオールプロセスに参加している。モントリオールプロセスで挙げられる森林変化の評価に関しては、定期的に森林蓄積量を把握することが必要である。森林蓄積量は林内の樹木の胸高直径と樹高から立木材積を計算し算出する。胸高直径は全木測定されうるものの、樹高は全木測定されることは少ない。そのため、未測定木の樹高は樹高曲線を用いて推定する必要がある。樹高曲線の重要性は、各直径階の平均樹高を推定することであり、その推定値は、立木材積および森林蓄積量計算には欠かせないものである。そこで本研究では、九州大学農学部付属演習林におけるContinuous Forest Inventory(CFI)調査の2002年、2010年の調査データを使用し、樹高推定が森林蓄積量推定に与える影響を評価することを目的とする。

217
衛星データによる新燃岳2011年噴火に伴う降灰域の把握
世見 淳一
(宮崎県林技セ),
福里和朗,
三樹陽一郎,
小田三保,
齊藤真由美
2011年の霧島山新燃岳噴火により、宮崎県南部に大量の火山灰が降り、県民生活や農作物、しいたけ生産等の林業への被害が生じた。被害状況の把握や対策を行うために、降灰域を把握することは重要であるが、広域にわたる降灰域を地上からの調査で把握することは困難である。そこで、降灰に関する情報を提供し森林整備対策を支援することを目的に、衛星データを利用して降灰域を把握することを試みた。ALOS/AVNIR-2の噴火前後の2時期のデータを用いて降灰域の抽出を行うとともに、降灰の確認された森林の降灰厚の調査を行い、精度について検証したので、その結果について報告する。