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年輪解析によるヤクスギ生立木の成長量測定
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伊高 静 (九大生資環), 吉田茂二郎, 溝上展也, 高嶋敦史 |
屋久島では江戸時代に大規模伐採が行われており、現在のヤクスギ天然生林には、伐採後に更新したスギ(コスギ)と、当時伐採されなかった樹齢数千年のスギ(ヤクスギ)が共存している。本研究の目的は、屋久島の固定試験地におけるスギ生立木の成長量変化を年輪解析によって明らかにすることである。結果は、ヤクスギにおいては大規模伐採開始以降、成長量が一時的に増えており、その後徐々に小さくなっている。また、コスギは、直径階20cmで最大直径成長量を示し、その後徐々に小さくなっている。更にコスギの地上更新木と着床更新木を比較すると、地上更新木の方が初期の成長量が大きく、これは、地上で樹木が獲得できる養分などの差によると推測できる。また、過去30年間に行なわれたモニタリング結果と比較すると、1800年前後に着床したと推定されるコスギの成長量の方が大きく、このことより、当時の生育条件は現在のそれより良好だったという事が示唆された。 |
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ヤクスギ土埋木生産の変遷と現状について
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佐藤政宗
(鹿大農), 寺岡行雄 |
土埋木とはかつて伐採されたヤクスギの伐根や木目が不揃いな残材,風倒木などのことであり,現在ヤクスギ工芸品の唯一の原材料である。現在ヤクスギ工芸品の原材料は土埋木に依存しているが,その生産の実態はほとんど知られていない。そこで,1970年代から始まったとされる土埋木生産の歴史的展開を,国有林のデータや生産事業体への聞き取り調査,生産箇所の現地調査を基に明らかにする。さらに近年,様々な要因から土埋木の生産が困難になってきていると言われており,土埋木生産の現状,土埋木の販売状況,既土埋木生産地域等に関して整理し,今後の土埋木生産に関して考察した。 |
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ヤクスギ天然林における粗大木質リター(CWD)の定量化
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小石裕佳里 (九大生資環), 吉田茂二郎, 高嶋敦史, 伊高 静, 溝上展也 |
ヤクスギ天然林は江戸時代における大規模伐採や,台風の常襲等による人為・自然撹乱を受けている。また,ヤクスギは一般のスギと比較して樹脂分が多く腐朽し難い特性を有する。これらの条件から,ヤクスギ天然林には数百年以上前に発生した巨大な切株・倒木等の粗大木質リター(CWD)が多数存在する。CWDは動植物の生息環境となり,養分循環,炭素収支に影響を与える等森林生態系において多様な機能を有する。また,実生の苗床として天然更新に寄与することから森林動態にも影響を与えるが,これらの機能の評価を行うためにはCWDの定量化は重要である。本研究はヤクスギ天然林内に設置された複数の固定試験地においてCWDの材積量の推定,腐朽状態の解明を目的とする。今回は,二人だけの小径試験地(1ha)における定量化の結果および他の試験地とのCWDの構成の比較し,地理状況,撹乱状況等の要因との関連性を検討する。 |
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ヤクスギ円板のデータベース構築
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吉田茂二郎
(九大農) |
屋久島のヤクスギ円板は、ヤクスギを多量に伐採していた時代に、旧営林署から標本として島内外の公的機関を中心に寄贈され、一方で民間では工芸品として流通し、現在も色々な場所で見ることが出来る。これらの円板は、標本や工芸品という性格上、中心から年輪が存在していることが多く、かつ伐採年や伐採場所等が明らかなものも存在する。ヤクスギが伐採出来ない現状では、これらの円板が持つ情報は、ヤクスギ個体の成長過程はもちろんのことヤクスギ林の動態を知る上で非常に有効な情報といえる。以上から、このヤクスギ円板を資料として、ヤクスギ林ならびにヤクスギ個体の成長に関する研究を進めることならびに貴重な円板の散逸防止を目的に、屋久島、鹿児島県を含む全国に存在するヤクスギ円板の基礎情報を収集するとともに円板のデータベース (DB)を構築し管理することを目指している。今回はその途中経過について報告する。 |