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帯状伐採されたスギ林分における地温と水分環境
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作田耕太郎
(九大農), 溝上展也 |
日本国内の森林面積のうち約4割を占める人工林においては,間伐など必要な保育作業が行われない,いわゆる施業放棄型林分が増加している。施業放棄型林分には,林冠の閉鎖による林床植生の消失や傾斜地での土壌流亡などの懸念があり,近年では持続可能な森林経営が国際的に求められていることからも,間伐などの保育作業を適宜実施する必要性が高い。人工林における更新法の一つである帯状伐採は,素材生産,林地保全そして生物多様性維持など多面的に有効な手法とされ,伐採面に植栽された更新木の成長も皆伐地と比較して遜色ないとの報告もある。しかしながら,帯状伐採面のある種特殊な形状が更新木や林床植生に与える影響には不明な点が多く,事例的研究の積み重ねが必要である。本研究では,大分県大分市(県民の森)における帯状伐採の行われた56年生スギ林分を対象に伐採地,林縁そして残存林分内の地温および水分環境について報告する。 |
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間伐および間伐時の下層刈り払いが雨滴侵食に与える短期的効果
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木崎巧治 (宮大農), 伊藤 哲, 平田令子 |
ヒノキ林では林冠が閉じやすくスギ林や広葉樹林と比べて林床の裸地化により侵食が起きやすいと言われている。その解決策として適度に間伐を入れることで林床まで光をいれ、林床植生の回復を図ることが重要であると考えられており、これまでに林床植生の回復が侵食量を低下させることが報告されている。しかし、間伐による林冠被覆の低下や間伐時の下層刈り払いによる低木層被覆の除去などの林分構造の違い、地形や土壌の堆積様式の違いが雨滴侵食に与える影響についてはあまり調べられていない。そこで、本研究では上記の内容を総合して間伐が表土保全機能に及ぼす短期的な効果を調べることを目的とした。調査は熊本県中部に位置する城山国有林内のヒノキ林で行った。間伐・下層刈り払いの有無、地形の異なる8パターンの林分にスプラッシュカップを設置して飛散土砂量を測定した。この調査結果から、間伐が表土保全機能に及ぼす短期的な効果について考察する。 |
303 |
スギ間伐材が炭素代謝に及ぼす影響評価 −間伐材の分解過程−
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今村志帆美
(鹿大農), 米田 健 |
スギ植林地内に放置された間伐材から放出されるCO2量が,植林の炭素代謝に及ぼす影響評価を本研究の目的としている.間伐後の材積生長に伴う炭素吸収速度に対する放置間伐材からの炭素放出速度の割合を評価の測度とする.評価には,材積の集積量と生長速度,間伐材の集積量と分解速度が必要となり,気象条件や立地条件が主要な慣用要因となる.本発表においては,間伐材の分解速度と環境要因さらには間伐後の放置年数との関係に焦点を当てる.対象林は鹿児島大学の高隅演習林内のスギ植林地で,間伐施業から3〜19年経過した間伐材を対象とした.これら間伐材の容積比重の減少量から,間伐後の平均的な分解速度を推定した.分解速度の季節変動性の把握を目的とし,間伐材からのCO2放出速度の季節変化を観測した.分解過程は1本の間伐材であっても不均質に進行する.これらの不均質性も評価した.これら分解速度と環境パラメータの関係を中心に報告する. |
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高隈演習林に植栽されているヤクスギの生長特性 −地形別、他品種間との比較−
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鶴田修市
(鹿大農), 芦原誠一, 米田 健 |
屋久島の標高1000m付近に分布するヤクスギ(Cyptomeria japonica)の天然木は,巨木と樹脂成分に富んだ難分解性の材質で特徴づけられる.そのヤクスギを鹿児島大学の高隅演習林内で植栽した場合,生長速度が高く幹材硬度が低いとの情報をえた.そこで,ヤクスギは環境により生長特性を適応的に大きく変化できる可塑性が高い樹種であるということを作業仮説とし,それを現地調査により検証することを本研究の目的とした.調査は,演習林内500−800mの標高帯に植栽されたヤクスギを対象とし,多様な林分でその肥大生長速度,形状比,幹材硬度などを観測し,それら林分間での比較を通じ,生長特性の可塑性の大きさを評価する.また同一立地に植栽された他品種の生長特性との比較を通じその特徴を明らかにする. |