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再造林放棄地における先駆性樹種の成長特性に関する研究
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保坂武宣 (九大農), 吉田茂二郎, 長島啓子, 溝上展也 |
人工林を伐採した跡地に再び造林が行なわれない再造林放棄地が拡がる傾向にあり、森林における資源の減少、水土保全機能の低下、生物多様性保全機能の低下が懸念されるなど深刻な問題が生じている。再造林放棄地の植生回復状況を把握することを目的とした研究を行い、植生回復には萌芽による再生と実生による更新が見られ、萌芽による再生は人工林伐採前の下層植生が乏しい林分ではほとんど望めないこと、実生による更新は埋土種子による発芽が見られ、先駆性樹種が植生回復に重要な役割を果たしていることを明らかにした。先駆性樹種のなかで、成長速度の違いや環境への適応幅の違いなど、樹種によりそれぞれ性質が異なることについて、遷移と将来的な天然林育成への視点から論じる。 |
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下刈り研究は必要か −過去の研究と今後の展開−
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重永英年 (森林総研九州), 山川博美, 荒木眞岳 |
近年、再造林の低コスト化と関連して、育林経費の多くを占める下刈り作業の省略が課題となり、通常では植栽後6年間程度は毎年実施する下刈り回数を減らす方法、例えば、無下刈り試験といった研究が進められるようになった。下刈りが研究テーマとして注目されたのは昨今が初めてではなく、主に1960年から1970年代半ばの時期には省力化に関する報告が非常に数多くなされている。しかし、これらの研究結果が、現在の現場に反映された状況にあるとは言えない。この時代の研究や現場での取り組みから、何が分かり、何が問題として残されているのかを明らかにすることは、今後の下刈りに関する研究の方向性や手法、現場への普及を考える上で重要である。本発表では、下刈り研究を考証するとともに、今後の研究展開の考えを報告する。 |
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先駆種が優占するスギ植栽地における下刈り実施のタイミングと判断基準
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山川博美 (森林総研九州), 重永英年, 荒木眞岳 |
木材価格が低迷するなか、持続的に林業経営を行うために育林コストの大幅な削減が求められている。人工林施業のなかで、植栽後の下刈り作業は最も労力と費用を要する作業であり、多くの林地で植栽後6年程度の間、潔癖に実施されている。しかしながら、実際には植栽後6年間も下刈りを実施しなくても成林可能だと判断される林地も観察される。そこで、本研究は、林地の状況に応じて適切な下刈りを実施するタイミングと完了の判断基準を提示することを目的とした。調査地は、雑草木としてアカメガシワなどの先駆性木本種が優占し、下刈りが数回省略された4年生のスギ人工林である。成長期終了後に植栽木および周辺の雑草木について、現在の樹高(成長期末)および年枝から昨年の樹高(成長期首)を測定し、期首における植栽木と雑草木の競合関係がその後の成長に及ぼす影響を解析した。 |
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下刈り実施年数の違いにおける雑草木が植栽木の成長に及ぼす影響
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金城智之 (鹿大農), 寺岡行雄, 芦原誠一, 井倉洋二, 山川博美 |
低コスト育林構築のため,下刈りを省いた場合の,植栽木の成長への影響を定量的に明らかにする必要がある。鹿児島大学高隈演習林に植栽されたスギ幼齢林分(4年生)を対象として,下刈りを毎年実施,隔年で実施,あるいは全く下刈りをしない等の7つの下刈り試験地を設け,植栽木の毎木調査を行った。植栽木と雑草木の競合状況については,山川らを参考にして,植栽木の樹冠が周辺雑草木より半分以上出る(C1),植栽木の樹冠の先端が雑草木よりでる(C2),植栽木と雑草木の樹高が同程度(C3),植栽木が雑草木の中に完全に埋れる(C4)の4タイプに分類した。植栽後下刈りを毎年実施した箇所と比較して,下刈り実施年数減少に伴い,植栽木の成長が低下する傾向が認められた。 |
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下刈り省略による広葉樹の被圧がヒノキの期間生長量に与える影響
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平田令子 (宮大農), 重永英年, 伊藤 哲 |
下刈り省略がヒノキの期間成長量に与える影響を明らかにするために、宮崎大学田野演習林のヒノキ再造林地に設けられた下刈り実施区と下刈り省略区において植栽後5年目のヒノキの一年間の各サイズ(胸高直径、樹高、樹冠面積)の成長量を求め、比較をした。さらに、下刈り省略区のヒノキの期間成長量に対し、広葉樹によるどのような被圧が影響を与えるかを推定するために、4年生時の被圧状態(上方被圧の有無、側方被圧方位数、被圧広葉樹の常緑・落葉の別)を説明変数とし、決定樹分析により統計モデルを構築した。その際、1)期間成長量の期首サイズ依存を取り除くため、2)下刈り区を基準として下刈り省略区の期間成長量を評価するために、下刈り区のヒノキの期首−期末サイズに関する回帰曲線からの残差を求め、モデルの目的変数とした。本発表では、4年生時の各サイズを目的変数とした場合(第66回九州支部大会で発表)と比較した結果を報告する。 |
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Mスターコンテナを用いたスギ苗の育成試験(V)−培地及び施肥の検討−
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三樹陽一郎 (宮崎県林技セ) |
Mスターコンテナはポリ製の波形シートを筒状に丸めたコンテナ苗用の育成容器である。前報(九州森林研究、64:50-52)では、コンテナ苗を根系のサイズ別に植林試験を行ったところ、根系サイズが小さいほど植栽の作業性は高まる傾向にあった。このため、コンテナ苗の生産においては、小型の容器で育苗しつつも良好な成長が求められる。今回は、Mスターコンテナで培地の種類及び施肥がスギ苗木の成長に与える影響について調査したので報告する。 |