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シリブカガシ実生の生存力に関する生態学的研究 −桜島火山灰土壌での栽培実験−
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田崎裕樹 (鹿大農), 米田 健 |
シリブカガシ幼令期での環境ストレスに対する耐性力を,一年生実生及び種子を用いて,鹿児島大学敷地内苗畑実験地と桜島実験地において2011年の4月から観測を続けている。桜島では土壌保水力の違いによる耐性の差を調べるため,苗畑の土(客土:苗畑区),火山灰土(1倍区),火山灰盛土(2倍区)の3条件で観測した。7月中旬までの結果では,発芽率は両実験地間,さらには桜島の3土壌区間では大きな差は現れなかったが,発芽後の成長においては両実験地とも苗畑土で良い傾向が現れた。1年生実生の生存力(萌芽率で評価)は,塊根が大きい個体ほど成長が良好であり,桜島の1倍区での萌芽個体数が最も多く,同実験地の苗畑区で最も少なくなった。大会では10月までの観測結果に基づき,発芽率,萌芽率,死亡率を生存力のパラメータとし,生育環境要因(土壌含水率,照度,地温等)との関連からストレス耐性を考察する。 |
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シリブカガシの攪乱耐性に対する実験的観察
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高岡勇志 (鹿大農), 米田 健 |
シリブカガシは芋(塊根)を持ち、これにより厳しい環境下で生存できることが先行研究で明らかにされている。本研究では、明るい場所で育った稚樹(a)、暗い場所で育った稚樹(c)、中間の光環境の場所で育った稚樹(b)の3種類のシリブカガシに茎有芋有、茎無芋有、茎有芋無、茎無芋無の4種類の処理(ストレス)を行い,それらを明るい場所(A)、暗い場所(C)、中間の光環境の場所(B)の3光条件に植栽することで生存率と成長率が変化するかを観測した。その結果,生存率で芋有効果は常にプラスに働いたが,茎無効果はA-c(c苗をA条件で栽培)でマイナスに働き、B-cでプラスに働き、C-cでプラスに働いた。(茎無効果)=(茎切りによって節約されるエネルギー)−(光合成により生産されるエネルギー)によって決定されるので、暗い場所で育った稚樹は茎切りによって節約されるエネルギーが小さいまたは光合成により生産されるエネルギーが大きいと示唆された。 |
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2種類の土壌に植栽したオキナワウラジロガシとアマミアラカシの成長特性
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香山雅純 (森林総研九州), 青木菜保子, 平山大輔, 舘野髞V輔, 川路まり, 米田 健 |
徳之島には、常緑のカシ類として、オキナワウラジロガシとアマミアラカシが分布している。オキナワウラジロガシは、主に徳之島中央部の黄色土壌の広がる自然度の高い亜熱帯性常緑広葉樹林に分布している。一方、アマミアラカシはオキナウラジロガシの分布する地域にはあまり生育していなく、徳之島南部の石灰岩母材の土壌 (石灰質土壌) の地域に分布している。逆に、石灰質土壌の地域にオキナワウラジロガシは分布していない。このことから、オキナワウラジロガシとアマミアラカシはそれぞれ黄色土壌と石灰質土壌の地域に住み分けていると予想される。本研究は、オキナワウラジロガシとアマミアラカシの実生を黄色土壌と石灰質土壌に育成し、それぞれの土壌に対する順化能力を検討することを目的とした。そして、成長、光合成速度、植物体中の元素濃度を測定した。 |
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常緑広葉樹の日肥大生長特性に見られる可塑性
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小川裕也 (鹿大農), 赤峰 匠, 米田 健 |
本研究は,日肥大生長特性に焦点をあて,環境に対する可塑性から種の生長特性を解明することを目的とする.徳之島の亜熱帯林の高木を対象とした先行研究では(赤峰,2011),地形により日変化パターンが変わるタイプ(ジェネラリスト)と,変化が小さいタイプ(スペシャリスト)が存在した.本研究においては,これら日変化パターンの季節変化に焦点を当て,その可塑性を評価する.具体的には,先行研究で得られた2つのタイプが季節変化においても成立することを作業仮説とし,それを検証する.日肥大生長パターンは,幹直径が最大値を示す早朝からの初期減少速度,日最大直径と日最小直径の差,夕方の幹直径の回復(増加)速度,の3つのパレメータで評価する.本大会では,徳之島三京地区の亜熱帯林,高隅演習林,大学キャンパスでの観測結果に基づきその可塑性を報告する.キャンパスでの観測では,季節性×天候(雨天・晴天)を狙いとした. |
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スギの主軸成長の経日変動と日周期
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玉泉幸一カ (九大農) |
樹木の幹の成長は肥大成長と伸長成長によって構成されている。幹の成長メカニズムを解明するには肥大成長と伸長成長の両面からの研究が必要である。このうち、肥大成長については種々のデンドロメーターの開発により、高い精度で連続測定することが可能となってきたが、伸長成長については、装置の開発が遅れ、十分な研究がなされてこなかった。ところが、近年、安価な自動写真撮影装置の開発により、伸長成長の連続測定が可能となった。前回(2010年)の報告では、1.晴天日には昼間はほとんど伸長せず夜間に伸長すること、2.雨天日には昼夜ともに伸長すること、3.雨天日は晴天日と比べて総伸長量が多くなる傾向のあることを明らかにした。今回は、1.夜間成長の経時変化、2.晴天日と雨天日の総成長量の違いを明らかにすることを目的として、3年生スギの主軸の連続写真を解析した。 |