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ヒノキ若齢林におけるシュート呼吸速度の樹冠内変動
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荒木眞岳 (森林総研九州), 玉泉幸一郎 |
地球温暖化が問題となり,森林の持つ二酸化炭素の吸収源・炭素の貯蔵庫としての役割が期待されている。森林を構成する植物は,光合成によって二酸化炭素を吸収する一方,呼吸によって二酸化炭素を放出している。したがって,森林の炭素収支を解明する上で,呼吸は重要な要因である。本研究は,ヒノキ若齢林を対象として,ヒノキ樹冠の呼吸量を推定することを目的とする。その第一歩として,7月にヒノキシュート(一次枝先端の葉と軸)の呼吸速度を測定した。サンプルシュートは,ヒノキ樹冠(3−8m)を5層に分け,各層から3本ずつ採取した。本発表では,7月におけるヒノキシュートの呼吸速度やその温度依存性(Q10)が,樹冠内でどの程度変動するのかを明らかにする。また,呼吸速度の樹冠内変動に影響を与える要因について検討する。 |
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異なる被陰・施肥環境下で生育したスギシュートの呼吸速度
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西牟田和沙 (九大生資環), 玉泉幸一郎 |
呼吸は森林の炭素収支を決定する重要な因子である。呼吸は気温や光強度(LI)などにより変化するため、これらを考慮した統一的なモデル式で表すことができれば森林の炭素収支を予測する上で利用価値は高い。本研究ではスギ(Cryptomeria japonica)を対象に異なる被陰・施肥環境下で生育させたシュートの呼吸速度と各処理との関係を明らかにし、温度、LI、葉内窒素濃度を変数としてモデル式の作成を試みた。3年生スギ挿し木苗をそれぞれ相対光強度100%、50%、25%、12.5%、6%、施肥0g、5.4g、10.8g、21.6g(N:P:K=1:1:1)環境下で1年間生育させた。これらの個体から当年生シュートを切り枝として採取し、実験室内で呼吸−温度曲線を作成した。また測定収量後に葉の窒素濃度を測定した。これらの結果に基づいて呼吸速度と各処理との関係、呼吸速度と窒素濃度との関係について議論する。 |
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被陰と施肥処理がヒノキ個葉の温度依存性におよぼす影響
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奥田峻史 (九大農), 玉泉幸一郎 |
今後の地球温暖化に伴う気候変動が、森林の炭素収支に影響を及ぼすことが予想されている。これらの影響を予測するためには森林の炭素収支を支配している光合成と呼吸のバランスが気候変動によって、どのように変化するのかを解明することが必要である。 本研究においてはヒノキ(Chamaecyparis obtusa)を対象とし、生育時の光強度、施肥強度が暗呼吸速度の温度反応性に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。光強度は5段階の相対光強度となるように設定した。また、施肥強度は4段階とし施肥量をそれぞれ0g, 5.4g, 10.8g, 21.6gとした。処理個体は5個体とし合計100個体を準備した。これらの個体からシュートを選択し、呼吸箱を用いて温度―呼吸関係を測定した。 |
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カイヅカイブキにおける成形葉と幼形葉の生理,形態および水分特性の比較
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高瀬雅生 (九大生資環), 玉泉幸一郎 |
カイヅカイブキは通常、鱗片状の成形葉を着葉するが,強度剪定や樹勢の劣化によってスギ状の幼形葉が発生する。本研究では,これらの異なる形態の葉の生理的な意義を明らかにすることを目的として、それぞれの葉の光合成特性,水分特性,および形態特性を比較した。光合成特性では,葉面積あたりの光合成は成形葉が幼形葉よりもわずかに高かったが(p=0.89)、乾重あたりでは幼形葉の方が有意に高かった(p<0.05)。この原因は、幼形葉が有意に大きい比葉面積(SLA)の葉を形成したためであった(p<0.01)。これらの結果から、幼形葉は同じ資源量で葉面積の大きな葉を形成し,高い光合成速度を維持しているといえる。幼形葉のこのような特徴は、乾燥に対する耐性を犠牲にしていると予想されることから、今後、さらに水分特性の測定を行い、光合成特性と水分特性のトレードオフの関係について議論する予定である。 |
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日本産樹木の枝における木部通水組織と水分通導性の関係
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山本佑介 (九大生資環), 作田耕太郎 |
樹体の水分通導性は、根から樹冠への水輸送を制御する重要な因子の1つであり、一般に幹や枝などの水分通導性は、道管など木部通水組織のサイズや密度によって規定されるとされている。これまでに、落葉広葉樹や針葉樹の水分通導性については、特に海外で多くの測定が行われている一方で日本国内に産する樹木、特に常緑広葉樹についての測定例は少ない。本研究では、日本国内に生育する様々な高木性樹木の水分通導性について、枝の水分通導性と通水組織との関係を明らかにすることを目的とした。材料として福岡市近郊に生育する針葉樹3種、常緑広葉樹10種、および落葉広葉樹10種以上を用いた。分枝がなく、葉が着生していない長さ15cm程度の枝試料を作成し、高圧流量計を用いて水分通導性の測定を行った。さらに枝基部の横断面切片を顕微鏡で観察することより道管サイズおよび密度などを算出し、枝の水分通導性と通水組織の関係について検討を行った。 |