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不完全なマツの根系癒合におけるマツノザイセンチュウの移動
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田中一二三 (海の中道海浜公園管理センター), 保坂武宣, 玉泉幸一郎 |
海ノ中道海浜公園で発生するマツ林の小集団枯れは、主に、根系を経由したマツノザイセンチュウを原因とするマツ材線虫病によるものであることを明らかにした。このようなマツ材線虫病の拡大には根系の癒合が不可欠であるが、根系癒合には、完全癒合から不完全癒合のものまで様々な形態のものがあり、どのような形態においてマツノザイセンチュウの移動が起きるのか明らかでない。今回の研究では、不完全癒合におけるマツノザイセンチュウの移動の有無を明らかにすることを目的とした。切断した不完全癒合の根系において一方の根に人工接種を行ったところ、マツノザイセンチュウは高い確率で他の根に移動することが確かめられた。そこで、生木においても人工接種試験を行って、移動の有無を明らかにした。 |
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桜島のクロマツ小径木林におけるマツ材線虫病の動態
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松尾俊幸 (鹿大農), 大久保恵介, 畑 邦彦, 曽根晃一 |
桜島のクロマツ小径木林における枯損被害の発生パターンの特徴を解明するために、枯損木の空間分布を調査した。林分内に、20m×40mの調査プロットを設定し、プロット内部の胸高以上のクロマツの位置を決定し、個々のクロマツの生死を記録した。枯損木の空間分布様式を解析するために、プロットを1m、2m、4m、5m、10m四方に区分し、その中に存在する全てのクロマツについて、Lloyd(1967)の平均こみ合い度(m*)を算出し、分布パターンをIwao(1972)のunit-size m*-m関係を用いて解析した。さらに、枯損木とその翌年の枯損木との空間分布関係を、Iwao(1977)のкindexを用いて検討した。結果、枯損木はグループ単位で発生するか、単木で発生するかはその年の被害程度によって異なるが、枯損木の発生場所は均一に分布していることが明らかになった。 |
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マツノマダラカミキリ幼虫の体重と蛹化、羽化までの有効積算温量
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吉田成章 | マツノマダラカミキリ成虫の体重と羽化時期については関係があるとするものとないとするものがある。幼虫から羽化までの期間の大部分は幼虫体なので、羽化時期との関係をみるには幼虫の体重がより密接に関係していると考え、幼虫の体重と蛹化、羽化までの有効積算温量の調査した。供試した幼虫は野外で採集したものを使用し、供試する個体の体重分布がなるべく均等になるように選んだ。発育零点を12℃として個体ごとに有効積算温量を計算し、試験開始時の体重との回帰関係をみた結果、R−2乗値が0.04程度となり、関係は見られないこととなった。マツノマダラカミキリ幼虫の体重は個体差が大きいことから同一環境で採集した個体群では相関関係を検出することができなかったとも考えられる。遅く産卵され越冬までの期間が短い場合、体重が軽くなることが報告されていることから、成長過程が大幅に異なる個体を使用すれば関係が検出できるかもしれない。 |
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幼齢の線虫接種検定合格クロマツを枯死させたマツノザイセンチュウの病原性
ならびに枯死個体からのマツノマダラカミキリの羽化脱出 |
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宮原文彦 (福岡県森林技セ) , 大川雅史 |
福岡県では、苗木生産業者による「筑前スーパーくろまつ(マツノザイセンチュウ島原個体群による接種検定に合格した抵抗性クロマツ)」が、海岸松林等に植栽され始めて14年目となる。これまでは植栽直後の活着不良や下刈り時の誤伐以外にまとまった枯れはなかったが、2010年秋、糸島市桜井の海岸に2007年春植栽された筑前スーパーくろまつが約50本枯死した。枯死個体にはカミキリの後食痕が認められたことと枯死の状況からすべてマツ材線虫病による枯死と判定したが、今回一部の枯死個体から分離・培養したザイセンチュウの病原性を調査したので報告する。また、掘り取り回収した枯死個体のうち約2/3の個体からマツノマダラカミキリが羽化脱出したので、クロマツの樹体サイズと羽化頭数、脱出位置における最小幹直径等について報告する。 |