510
クロマダラソテツシジミ成虫の個体群動態
寄井田祥平
(鹿大農)
曽根晃一,
畑 邦彦
鹿児島県本土では2007年以降、毎年クロマダラソテツシジミ(以下クロマダラ)が侵入し、ソテツに深刻な被害を及ぼしている。そこで、桜島において2010年7月5日から11月25日まで2日間隔で、標識再捕獲法により成虫の個体数季節変動などの生態を調査した。7月19日から11月17日の間に1220頭(雄777頭、雌443頭)をのべ1666回捕獲した。捕獲数は9月初旬までは、8月初旬に一時的に増加したものの、それ以外の調査日では少なかった。その後、9月中旬から約1か月間多くの個体が捕獲された。雄雌共に再捕獲率は、調査地内に幼虫が食害するソテツ新葉がいたるところで見られた時期に高く、滞在日数も長くなる傾向が認められた。

511
シキミ畑におけるアザミウマの発生消長について
東 正志
(鹿児島県森林
技術セ)
近年,特用林産物(枝もの)における病害虫相談の中で,シキミの葉に被害を与えるアザミウマ(スリップス)についての相談が多く寄せられている。このような中,シキミにおけるアザミウマの生態や薬剤防除の適期などについては明らかではない。そのため,当センター内のシキミ生産畑において,粘着トラップにより発生消長を調査したので,その概要を報告する。

512
デイゴを加害するデイゴヒメコバチの光反応について
喜友名朝次
(沖縄県森林資源
研究セ)
デイゴの新芽や若葉にゴールを形成し、最終的に異常落葉を引き起こすデイゴヒメコバチ(以下、ヒメコバチ)は、2005年石垣島で発見されてから、離島を含めた沖縄本島ほぼ全域に拡がる勢いで急速に被害が拡大した。対策として薬剤処理によるヒメコバチの防除技術を確立し、高い効果を確認しているが、飛散による影響で防除区域が制限されることやコスト面に課題が残るため、県内全てのデイゴを保護できていない状態である。今回の発表では、新たな防除技術を検討するために光に対するヒメコバチの誘引反応を調査した。

513
西表島における誘引トラップを用いたスズメバチの捕獲
小坂 肇
(森林総研九州),加藤一隆,
佐山勝彦,
牧野俊一)
スズメバチの刺傷被害を防ぐため、ペットボトルを利用した誘引トラップ(ハチを捕るための誘引餌を入れた罠)によるハチの捕獲が各地で行われている。誘引餌として、焼酎とオレンジジュースの混合液やハチミツ希釈水がよく用いられている。これらの餌を入れた誘引トラップ用いてヒメスズメバチ、コガタスズメバチ、ツマグロスズメバチの3種が生息する西表島でスズメバチの捕獲を試み、その効果を調べた。どちらの誘引餌でも3種のスズメバチが捕獲され、その効果が確認された。特に、ハチミツ希釈水はヒメスズメバチに対して高い誘引効果があることが明らかになった。ただし、西表島で普通にみられるツマグロスズメバチはどちらの誘引餌を用いてもあまり捕獲されず、その効果が弱いのか、誘引トラップを設置する場所が不敵であった可能性も考えられた。