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ヒメネズミの貯食の特性の解明(T)
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吉村和徳 (鹿大農), 中村麻美, 大石圭太, 畑 邦彦, 曽根晃一 |
ヒメネズミの貯食活動を通して、種子散布や樹木更新に重要な役割を果たすと考えられている。しかし、ヒメネズミの貯食活動は、アカネズミの影響や、運搬可能な種子のサイズ等の関係から、調査例が極めて少ない。そこでヒメネズミの貯食活動調査のために、ヒメネズミのみが利用できる2種類の餌場(地面に5mmメッシュの金網で囲んだものと地上1mの高さに固定したもの、以下FS)を作製し、その有用性を検証した。2010年4月から6月にかけて捕獲調査を行い、アカネズミよりもヒメネズミが多く活動していた場所にFSと赤外線センサーカメラを設置して訪問者の特定を行った。その結果、FSの周囲に立木等が存在しない状況では、アカネズミは地上1mのFSを利用できなかった。このことから、地上1mに設置したFSは、設置の際に周囲の立木の状況等に注意を払えば、ヒメネズミのみが利用できるFSとして機能することが明らかになった。 |
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アカネズミとヒメネズミの体重および繁殖に対する餌条件の効果
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大石圭太
(鹿大農), 中村麻美, 吉村和徳, 畑 邦彦, 曽根晃一 |
アカネズミ(以下、アカ)とヒメネズミ(以下、ヒメ)は南九州の多くの森林で同所的に生息し、秋から冬にかけて、マテバシイ堅果(以下、堅果)を重要な餌資源として利用している。アカの個体数は堅果生産量の影響を強く受けて増減する。1997〜2008年のアカの体重と繁殖成功および堅果生産量の解析により、堅果生産量はエネルギーの体内蓄積量を通して、アカの繁殖成功を左右すると推察されることを2009年に報告した。これに対し、ヒメの個体数はアカに比べ、堅果生産量との同調性が低い。アカがヒメに対して一方的に優位という2種の種間関係が堅果生産量に対する2種の反応の差の要因となっていると考えられる。そこで今回は、ヒメの体重変動と繁殖成功および堅果生産量の関係を解析した。これらの結果をもとに、堅果生産量が与える効果について、アカとヒメを比較し、これら2種の種間関係および個体数変動メカニズムを考察する。 |
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DNA Feed Profiling法に適した葉緑体DNA領域の探索
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盛島 司 (九大生資環), 白石 進 |
近年、草食性動物の食性解析にDNAバーコーディング法を適用した報告がされている。しかしDNAバーコーディング法では1検体の分析に多くの時間と経費を費やす。そこで、より簡便に多数の検体を分析する方法として、糞中に残存する葉緑体DNAの塩基配列長多型を利用した食性解析法(DNA Feed Profiling法)が開発された。この方法では葉緑体DNAに存在する3つの遺伝子間スペーサー領域(trnD-trnY, trnF-trnL, trnP-trnW)を用いており、これら3つの領域における塩基配列長をデータベース化した。しかし、その種識別率はtrnD-trnYで64.0%、trnF-trnLで44.1%、trnP-trnWで53.5%にとどまっており、より精度の高い分析を行うためには種識別能の高いDNA領域の利用が求められる。そこで、葉緑体ゲノムが解読されている約100種の遺伝子情報をもとに、より塩基配列長多型に富んだ領域を探索した。 |
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広葉樹の形態を利用したニホンジカによる採食圧指標の検討
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矢部恒晶 (森林総研九州), 柳田蓉子 |
ニホンジカの採食に影響される樹木の形態から、シカの採食圧ないし高密度化を示す簡便な指標を検討するため、霧島山地において広葉樹の毎木調査とシカによる食痕の調査を行った。その結果、リョウブ、イヌツゲ、イソノキ、ナツツバキなどの樹種で出現本数が比較的多く、シカによる剥皮本数も50%以上となった。この中で、刈り込みに強く採食耐性が高いと考えられるイヌツゲについて、相対的なシカ生息密度と形態の比較を行った。その結果、生息密度が高い区域で顕著に短枝化が進んだ樹形の割合がより高く、葉のサイズがより小さい傾向が見られた。 |