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少花粉ヒノキ品種のさし木発根性
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大川雅史
(福岡森林技セ) |
福岡県では、林木育種センターおよび九州各県と協力して、平成19年度に少花粉ヒノキ17品種を開発した。これら少花粉品種の発根率は品種ごとに異なり、安定的な挿し木苗生産を行うためには、発根率を向上させる必要があると考えられた。予備試験において、ブラシノライド1ppbに12時間浸漬した後、オキシベロン液剤原液(IBA:0.4%)に数秒間浸漬したところ発根率が向上する傾向が見られた。そこで今回は、ブラシノライドが発根率に影響しているのか、それともオキシベロンとの併用が影響しているのかを確認するため、ブラシノライド単独処理とオキシベロンとの併用処理で挿し木を行った。さらに併用処理については、ブラシノライド→オキシベロン、オキシベロン→ブラシノライドの2条件で挿し木を行った。これら各処理条件について発根調査を行ったので報告する。 |
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センダンとニセアカシアの培養根を経由した遺伝子組換え系の確立
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高野成美 (九大農) |
植物育種において遺伝子組換え技術は目的遺伝子の直接導入や育種期間の短縮等、有用な育種法となっている。しかし、対象植物となるためには再分化系と遺伝子組換え系が確立されていることが求められ、樹木では双方とも確立されたものが少ない。特に遺伝子組換え系においては、従来の再分化系が利用できない場合も発生する。この原因としては、再分化する組織が固く、感染がうまくいかないことが考えられる。これを解決する方法として、根系を感染器官として用いることを考案した。根系は恒常的に成長することから、組織が柔らかく感染が容易であると考えた。本研究においては高炭素固定樹種のセンダン、乾燥地緑化樹種のニセアカシアを対象とした。試験管内で発芽伸長させた根を1cmに切断し、アグロバクテリウム法により遺伝子組換えを行い、レポーター遺伝子のGFPを用いて組換え根を選抜した。今回はGFPの導入効率と根の培養の伸長状況を報告する。 |
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屋久島のヤクタネゴヨウ採種林・見本林における開花結実量
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金谷整一 (森林総研九州), 手塚賢至, 手塚田津子, 川上哲也, 斉藤俊浩 |
屋久島と種子島にのみ自生するヤクタネゴヨウは、生残個体数が2,000〜3,000個体ほどと推定され、環境省レッドリストには絶滅危惧種IB類としてランクされている。このヤクタネゴヨウを事業的に増殖・回復することを目的に、2002年2月に九州森林管理局が、屋久島と種子島に採種林ならびに見本林を造成した。これらは遺伝子資源の自生地(現地)外保全と位置づけられるとともに、うち採種林は、将来的な造林用の種苗生産の拠点としても期待される。しかしながら造成後は、森林管理署および民間ボランティアによる下草刈りやシカ柵設置等の管理作業ならびに成長量調査が実施されるだけである。今後の利活用のため、林分全体あるいは植栽クローン別の開花結実から種子稔性の情報を継続的に収集しておくことが重要となる。本報告では、数年間の開花から種子生産までの状況を調査した結果を整理するとともに、今後の管理等について議論する。 |
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ゴム産生植物ペリプロカ(Periploca sepium)における乳管の分布と発達過程の観察
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宮崎麻実 (九大生資環), 玉泉幸一カ |
植物の産生する天然ゴムは貴重な天然物資源であり、商業用樹種であるパラゴムノキ(Hevea brasiliensis)において、現在、遺伝子組換えを用いた天然ゴムの品質改良が行われている。我々は、形質転換効率が低いパラゴムノキのモデル植物として同じシス型のゴムを産生するペリプロカ(Periploca sepium)を用いているが、ゴムの貯蔵部位である乳管の構造については基礎的な情報が不足している。長井(2005)は、若齢のペリプロカの形態を観察し、乳管が髄と師部に単体で点在していると報告したが、その正確な分布には言及していない。また、10年生のパラゴムノキにおいて、乳管は形成層から師部へと移行するに伴い吻合し、同心円状に分布にしている(Sando. T et al., 2009)ことから、ペリプロカもまた成長により乳管の分布が変化すると考えられる。よって本研究では、当年生〜5年生のペリプロカを用いた凍結切片のOil red O染色、Nile red染色により、乳管の分布と発達過程を調べ、パラゴムノキの乳管の分布と比較した。 |