805 |
大分県におけるスギ集団葉枯症の発生分布と被害木の特徴
|
---|---|
山田康裕
(大分研林) |
1990年代以降、樹冠の変色と葉枯れ症状を特徴とするスギ集団葉枯症が、九州各地のスギ壮齢林で確認されている。本症状は、被害木から特定の病原菌が検出されていないこと等から、病原菌が主要因である可能性は低いとされるが、その発症原因やスギの成長への影響については未解明である。本研究では、大分県内における衰退林分の発生分布や被害状況を把握するとともに、衰退被害がスギの成長に与える影響を調査した。大分県内で確認された衰退林分の面積は約180haで、県北西部と県南部に局所的に発生しており、県北西部は変朽安山岩、県南部は砂岩・砂岩泥岩互層上に多く分布していた。また、衰退の進行したスギの樹幹解析の結果、材積成長の低下が認められた。今回の結果から、被害の発生分布や進行状況に地理的な偏りが認められ、表層地質との間に関連性が示唆されたので、その内容について報告する。 |
806 |
霧島山新燃岳噴火に伴う森林への影響
|
---|---|
小田三保
(宮崎県林技セ), 福里和朗, 三樹陽一郎, 齊藤真由美, 世見淳一 |
平成23年1月に霧島山の新燃岳が約50年ぶりに爆発的噴火をした。これに伴い宮崎県南部を中心に多量の降灰があり、市民生活だけでなく農作物や原木シイタケ栽培等にも多大な被害を与え、森林での作業にも影響を及ぼしている。また、多量の火山灰が長期間地表面に堆積することで、森林土壌の化学性や林木成長への影響が懸念されている。過去に新燃岳が噴火した際行われた調査研究では、噴火後半年から10ヶ月後に一部林木の樹勢衰退や土壌の強酸性化が見られたと報告されているが、降灰による森林への影響に関する研究事例は少ない。そこで、今回の新燃岳噴火に伴う降灰が森林に対してどのような影響を及ぼすのか調査を行ったので報告する。 |
807 |
奈良県春日山原生林における台風撹乱後の植生回復過程
|
---|---|
牧 さなえ
(鹿大農), 米田 健, 渡辺亜希子, 小松著美 |
台風により発生したギャップでの植生回復過程の解明を通じ,春日山原生林の林分構造に及ぼす台風撹乱の影響評価を研究目的とする.1998年9月の台風7号で発生した原生林内の約3000uのギャップを含む2.9haの調査地において,台風撹乱直後からこれまでの13年間に計6回の毎木調査を行った.調査区全体では,胸高直径8cm以上を対象とし,発生直後の1999年と2011年には,ギャップを含む3本のベルトトランセクト(計4000u)において樹高1.3m以上で胸高直径8cm以下の樹木を対象とした.本報告では,ベルトトランセクトの調査結果を中心に報告する.ギャップ発生からの2年間は,ギャップ内とその周辺において林冠木が高い死亡率を示した.ギャップ内の胸高断面積合計は,被害を逃れた亜高木の高い生長速度により急速に回復した.下層木においては,高い萌芽力をもつイヌガシとシキミがしだいに優占度を高める傾向を示した.シカに対する忌避性の観点からも考察する. |
808 |
竹林からの土砂流亡と地表面のタケの葉による被覆について
|
---|---|
佐々木重行
(福岡県森林技セ), 茅島信行 |
竹林と隣接するヒノキ林での土砂流亡を測定した。竹林からの細土流亡は隣接するヒノキ林と比較して大幅に少なかった。又、礫についても同様であった。この傾向は急傾斜の竹林でも同様であった。竹林では葉などの有機物の流亡割合がヒノキ林と比較して多かった。土砂の流亡を抑制する要因として落葉腐植層が考えられるため、竹の葉による地表面の単位面積当たりの被覆面積を測定した。この結果、竹林の土壌表面は何層にもタケの葉によって被覆されていることが分かった。何層にもタケの葉に被覆されていることから、竹林では雨滴が直接地表面に衝撃を与えないことで土砂流亡が緩和されていることが示唆された。 |