813
農地防風林造成に関する研究 −モデル林の造成と主要樹種の初期成長について−
新垣拓也
(沖縄県森研),
生沢 均,
平田 功,
今田益敬
本県は島嶼環境下にあり、台風や季節風による災害から農作物や農業施設を守るため防風林の設置は重要である。しかしながら、設置に伴う耕作地の減歩等により、林帯幅の狭い防風林が求められている。そこで、平成18年に農業研究センター(糸満市米須地内)において、多様な樹種を用いたモデルを設置したので、主要樹種の初期成長について報告する。

814
スギにおける根返りに対する限界風速の推定
茅島信行
(福岡県林試),
楢ア康二,
佐々木重行
台風災害に強い森林づくりを進めるにあたっては、根返りや幹折れといった風害に対する立木の力学的な評価を行う必要がある。これまで行ったスギ立木の引き倒し試験により、スギの根返りに対する抵抗力は胸高直径と非常に相関が高く、胸高直径から推測できることが明らかとなった。従って、樹木の外部形態をもとにしたモデルを用いることにより、樹高、胸高直径、枝下高、樹冠幅といった因子から、ある立木が耐えうる風速(限界風速)を推定することが可能となった。そこで、今回さまざまな林分で行った毎木調査のデータを用いて、異なる樹形のスギにおける根返りに対する限界風速を推定した。そして根返りに対して抵抗力の大きい、または小さい樹形や林分の条件について検討した。

815 沖縄島北部における森林気象環境について
比嘉幹彦
(KUTA),
古堅 公,
生沢 均,
新垣拓也,
壁谷直記,
清水貴範,
清水 晃
沖縄本島の北部森林は貴重な動植物の生育域であると同時に、本島全体を賄う大切な水源地となっている。一方、同地域は県の林業拠点でもあることから、森林施業や林道建設に伴う伐採が定期的に行われている。これらの伐採による影響を軽減すると同時に、世界的にも珍しい亜熱帯島嶼の森林を利活用するためには、この地域固有の気象環境を考慮に入れた森林計画を立てなければならない。そこで本研究では、沖縄本島北端部・西銘岳周辺に設置した気象観測露場で得られた各種気象データを紹介し、数少ない鳥獣保護区である西銘岳周辺の保全について考察する。

816
メコン川中下流域の落葉林流域における河川水位の季節変動
壁谷直記
(森林総研九州),
清水 晃,
玉井幸治,
清水貴範,
飯田真一,
大貫靖浩
メコン川は中国青海省南部、チベット高原東部を源流部とし、ミャンマー、タイ、ラオス、カンボジア、ベトナムを経て南シナ海に注ぐ大陸河川である。メコン川委員会は1960年代からメコン川流域に多くの降水量・流出量観測地点を設けてモニタリングを継続してが、森林流域を対象とした観測事例はほとんどない。そこで我々は、2003年よりカンボジア国コンポントム州の常緑林流域(流域面積4-3659km^2)を対象として、水循環過程の実態解明を進めてきた。一方、同国の全森林面積(114000km^2)において、常緑林(全森林面積に占める割合:33%)よりも広く分布する落葉林(同:42%)に関する水文特性は明らかにされてこなかった。そこで、メコン川中下流域の落葉林流域における水循環過程を明らかにする目的で、2009年にメコン川東岸のクラチエ州に落葉林流域(流域面積:2245km^2)を設定した。今回は、通年で得られた落葉林流域の河川水位の季節変動について報告する。