101 |
九州地方の林業関係者を対象とした森林の文化サービスインベントリ
|
---|---|
太田貴大(立命館大政策科学) | 森林の文化機能(文化サービス)の中で、森林・樹木への愛着または個人・社会のアイデンティティといった精神的な便益は、持続可能な林業や森林管理の大きな要因と考えられる。しかし、このような精神的な便益は把握や評価が困難なため、実際の政策に活用されにくい側面を持っている。これを改善するための導入として、本研究ではインタビュー会話から文化サービスの特定を行い、インベントリを作成した。対象地は素材生産量の多い林業地を持つ九州地方で、インタビュー対象者は森林や樹木と精神的に深い関係を持ちうる林業従事者や山林所有者とした。その結果、同じ抽象レベルを想定した際に、対象者らの発言の間に共通の特徴が見られ、複数の項目を有するインベントリを作成できた。これらのパターンが表出する原因を考察するとともに、九州地方の林業関係者を対象とした森林文化サービスインベントリの政策活用について議論する。 |
102 |
「奄美・琉球」世界自然遺産候補地森林の保全管理と担保措置
−沖縄本島ヤンバル森林の場合− |
---|---|
芝 正己(琉大農),Azita Ahmad Zawawi,Noor Janatun Naim Jemali,知念良之
|
2013年1月31日、世界遺産条約関係省庁連絡会議において「奄美・琉球」の暫定リスト記載が政府決定され、必要書類(資産説明、普遍的価値説明、該当評価基準、完全性の宣言、他類似資産との比較)がUNESCO世界遺産センターへ提出された。現在、世界自然遺産登録数は188件に上っており、我が国では「白神山地」、「屋久島」、「知床」、「小笠原諸島」の4か所が登録済みである。沖縄本島北部の3村を中心とするヤンバル地域は、県全体の森林面積の約26%(27,000ha)を占め、森林率は80%を超える。ここは、絶滅が危惧されている固有種や希少野生動植物の生息地域として、また、沖縄本島全域の水源地として重要な森林地帯である一方、林産物の生産・供給の場として古くから沖縄の林業の中核をなしている。そのため、ヤンバル森林の保全管理の問題は、従来にも増して地域社会を巻き込んだ複雑な状況を呈してきている。今回は、遺産候補地の“森林の保全管理と担保措置”という課題について報告する。 |
103 |
沖縄県における住宅建築の動向と木材利用の実態
|
---|---|
知念良之(琉大農),芝 正己 | 沖縄県の木材需給は、本島北部国頭村を主生産地とする県産材、宮崎・鹿児島両県からの移入材、海外からの輸入材で構成されている。最近の動きとして、需給量全体の減少傾向、輸入材の減少と移入材の急増、十数パーセント前後での県産材率が特徴的である。今回は、木材産業に大きな影響を与える住宅建築分野に焦点を当て、住宅供給の実態とそれに付随する木材利用の現状について報告する。歴史的・政策的な経緯から本県の住宅建築の動向は他府県のそれと大きく異なっている。2003年の新築一戸建て住宅(持ち家)数では、鉄筋コンクリート(RC 造)が全体の75%を占め、木造住宅は約5%にすぎなかった。しかし、その後徐々に木造住宅率は高まり2012年には12%を占めるに至っている。このことから、当面の間、木造住宅比率が高まっていくことが予想され、それに伴った木材消費量の増加が見込まれる。 |