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木材販売方式変更に伴う収支の変化:鹿児島大学演習林の事例から
奥山洋一郎(愛大農),芦原誠一,岡 勝,溝添俊樹 旧来の原木市場を介した販売から、生産現場と需要者が直接取引きする直売・直送が広がりを見せている。本報告では、鹿児島大学農学部附属演習林での販売実績から、原木市場への出荷(市売り)と製材工場等への直接販売(土場売り)の比較検討を行う。同演習林では2011年度から市売りしていた材の一部について土場売りを開始したが、この販売結果について過去の実績から次の点について推計した。(1)木材販売収入の変化、(2)販売方式変更によるコストの変化。(1)については、市売り方式では市場手数料・運送料が販売収入から天引きされていたが、今回の土場売りでは市況価格から算定した予定価格を上まわる販売収入を得た。一方で、土場売り方式では、材の仕分け・検知のコストが新たに発生したが、この部分を作業日報等から推計した。ただし、本事例では中間土場が必要なく旧来の作業土場を利用が可能であったが、仕分け可能な土場確保・搬出距離の増加といったコスト要素、民間事業体等の場合は事務・営業コストの増加も検討されるべきであり、この点は今後の課題である。

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2012年材価暴落の素材生産業者への影響 −大分県日田林業地域の実態−
尾分達也(九大生資環),川ア章惠,佐藤宣子
長期的な木材需要の減少に伴い木材価格は低迷を続けている。特に2012年は全国各地で木材価格の急激な下落が報告され、その影響は大分県や宮崎県など九州においても顕著であった。価格下落の原因については先行研究より、需要量に対する供給過多が主な理由であることが指摘されている。しかしながら、価格変動に対する素材生産者側の影響と対応に関する実証的な研究は少ない。そこで本研究では、対象を九州の一大木材集積地である大分県日田地域に絞り、原木市場および素材生産業者への聞き取り調査により日田地域の原木流通構造変化を明らかにする。その上で、素材生産業態別に価格下落時の原木出荷量推移を分析し、価格変動に対しどのような影響と対応があったのかを考察する。

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宮崎県における素材生産の実態:事業体アンケート調査の分析
藤掛一郎(宮大農),薛 佳,大地俊介
宮崎県における素材生産の実態を把握すべく、2012年末に県内の民間事業体、森林組合41事業体に対面アンケート調査を行った。その結果分析から以下の諸点が明らかとなった。@素材生産の中心は民有林の主伐であった。森林組合でも生産量の2/3は主伐であった。A活発な素材生産の背後に機械力の充実がある。小規模事業体も一通りの機械を揃えていた。B民間事業体では素材出荷の7割は製材工場等への直送であり、素材流通の変革が進んでいる。C3年後の生産予定を聞くと、16%の生産拡大が予定されていた。また、これとは別に条件次第では未利用材の搬出で11%の増産が可能との回答であった。よって、さらなる供給拡大は十分に予想できると考えられる。D一方で、立地や境界不明等の問題で伐採不可能な資源が民有人工林にどれくらい存在するか聞いたところ、2?3割との回答であった。長期的には素材生産の制約となることが懸念される。