201
利用率の理論解
北里春香(熊本県大),井上昭夫 正形数の安定性をもとにして、利用率の理論解を求めた。相対幹曲線式としてKunze式を採用した。2つの異なる相対高における正形数は、それぞれ一定の値で安定していると仮定した。これらの仮定より、胸高直径と利用可能直径を変数とする利用率の理論解を得た。今回の発表では、スギとヒノキのデータを用いて、求めた解の妥当性を検証したので、その結果について報告する。

202
タケにおける節間長モデルの改良
栃原志保莉(熊本県大),井上昭夫,作田耕太郎 発表者らは既報において、モウソウチクの節間長について、総節間数によって相対化された節間番号(相対節間数)と総節間長によって相対化された地際からの累積節間長(相対累積節間長)との関係は、稈サイズとは無関係に1本のシグモイド型曲線によって表現できることを報告した。そして、いくつかのシグモイド曲線をあてはめ、その関係には3次多項式が最もよく適合することを示した。しかし、曲線のあてはめにおいて、点(1, 1)を理論的に通らなくてはならないことが無視されていた。また、得られた3次多項式では、相対節間番号が1以下の範囲において相対累積節間長が極大値をとるという問題が生じた。そこで本研究では、これらの問題を解決できるようにモデルを改良し、モウソウチクとハチクの試料に適用したので、その結果について報告する。

203
長崎県スギ人工林に対応したシステム収穫表と細り表の作成
前田 一(長崎県農林技術開発セ),副山浩幸,田嶋幸一,久林高市,七里成徳 長崎県の主要造林樹種はヒノキであるが、人工林の約3割はスギを植栽してきた。長崎県のスギ人工林は、離島と本土といった海洋の影響やいくつもの地質により多様な立地環境において管理されてきた。このような特性から地位指数曲線などの人工林管理基準は長崎県独自で策定することが求められている。本研究課題では、県内の林分調査データを基にシステム収穫表と細り表の作成を行ったので、その内容を報告する。

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階層型成長モデルとコストモデルによる施業シミュレーションシステムの開発
光田 靖(宮大農),北原文章 本研究において階層型成長モデルとコストモデルとを結合し、任意の立地条件および任意の施業条件における将来的な収穫量およびその伐採・集材コストを予測するシステムを開発した。階層型成長モデルとは林分レベルにおける炭素収支に基づく純生産量推定モデルと、林分レベルの純生産量を個体に分配する個体レベルの競争モデルを結合したものである。コストモデルは伐倒、集材および造材の生産性を多様な機械の組み合わせた作業システムに対応して推定するモデルとなっている。また、コストモデルにおいては伐採対象となる個体サイズや林分の立地条件が生産性に影響するモデルとなっている。これらの階層型成長モデルとコストモデルを組み合わせたシステムを用いて、立地条件および施業条件を変えながら林業採算性シミュレーションを行った。

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亜熱帯林における伐出作業システムの収支試算ソフト作成
河野雄一(鹿児島県森技セ) 利用期の到来を迎えつつある奄美地域のリュウキュウマツ・広葉樹混交林について、自然環境に配慮した林業生産活動が必要とされている。そこで、施業効率のみを追求した大面積皆伐を抑制するため、小面積かつ低コストな伐出技術体系の模索に取り組んでいる。奄美地域の地形は急峻で表土の流出や小崩壊が起こりやすく、高密度路網の車両集材システムの導入は困難であることから、架線集材システムによる魚骨状伐採や群状伐採等の非皆伐施業の労働生産性を調査した。その調査結果を基に、奄美地域での架線集材作業システムの作業経費及び素材収入を試算するPCソフトを作成したので紹介する。