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間伐遅れ林分におけるスギ個体の樹冠動態と成長 ?節解析による成長過程の復元?
世見淳一(宮崎県林技セ),古澤英生,三樹陽一郎,黒木逸郎 近年、手入れの行き届いていない、いわゆる間伐遅れ人工林が増加しており、公益的機能の低下が懸念されている。間伐遅れ人工林は、風害や冠雪害の危険性が高く、その状態を解消することが必要とされている。最近になって樹冠を指標とした密度管理が推進されるようになってきた。本研究では、間伐遅れ林におけるスギ個体の樹冠動態が伸長・肥大成長へ与える影響を検証するために、樹木の成長履歴を把握する年輪解析に加えて、枝や樹幹内に封入された節の解析を行い、樹高・肥大成長だけでなく樹冠動態を復元することを試みたので、その結果について報告する。

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コナラ人工林育成試験 ?33年間の成績?
甲斐重貴(宮大農) 宮崎大学田野演習林17林班に設定された植栽密度が5段階(3,086?10,000本/ha)から成るコナラの人工造林試験地(除間伐未実施)の33年生の状況を調査し、これまでの調査結果(3、6、10、17、25年生時点)と合わせて、33年間の生存状況、成長量の推移、成長量に及ぼす植栽密度の影響及びシイタケ原木生産からみた適正密度と伐期齢について検討した。各試験区の33年生時点での生残率は20.0%?53.3%、成長量は、平均樹高が12.4m?17.2m、最大樹高が25.9m、平均胸高直径が13.5cm?18.0cm、最大胸高直径が31.5cm、林分幹材積が207.0?/ha?493.3?/haであり、ほぼ同年齢のコナラ萌芽林の成長量を大きく上回っていた。本試験林については、シイタケ原木に適した個体は少なくなってきており、今後は早めに伐採・利用して若返りを図っていく必要がある。

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イジュ人工林の管理指針作成に向けた樹冠調査
高嶋敦史(琉大農) イジュは、沖縄島北部やんばる地域に自生する広葉樹の中で比較的通直な大径材が得られることから、1980年代以降この地域の主要な造林樹種となっている。しかしながら、イジュ人工林については保育や密度管理に関する検討が不十分であるため、Y〜Z齢級の林分が増えてきた現在も必要な保育が実施されていない。そこで本研究では、Z齢級のイジュ無除間伐人工林で樹冠構造を調査し、このような人工林の管理指針作成に向けた情報を集めることにした。その結果、この調査地ではイジュが過密であるうえにエゴノキやイタジイなどの侵入種も林冠層に達し、植栽木の樹冠拡張が妨げられている様子が明らかになった。このことから、イジュ人工林においては、保育初期段階での侵入種の除伐や、その後の適正な密度管理が重要であることが示された。

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辺材面積に基づく間伐率の提案
井上昭夫(熊本県大),鶴田健二,篠原慶規,宮沢良行,高木正博,大槻恭一 辺材面積(胸高における辺材部の断面積)を基礎とした間伐率を提案する。この間伐率は、間伐前の林分辺材面積合計に対する間伐木の辺材面積合計の割合として与えられる。単木の辺材面積は胸高直径の1.6乗に比例すると考えて良いので、実際には胸高直径を1.6乗した値を合計することで求められる。よって、この間伐率は、吉田(2013)による直径合計に基づく間伐率ならびに断面積間伐率(胸高断面積合計に基づく間伐率)と類似している。当日の発表では、シミュレーションによる他の間伐率との比較結果について報告するとともに、この間伐率の生態学的な応用の可能性についても考察する。なお、本研究は環境省環境研究総合推進費「阿蘇を構成する植生の蒸発散の比較研究:草原の維持は水資源涵養に寄与するか?(代表:宮沢良行)」の一部として実施した。