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群状複層林の林分構造と成長特性 −九州電力社有林での事例−
大塚雄記(九大生資環),溝上展也,太田徹志,井上昭夫,加治佐 剛,吉田茂二郎 1970年代後半から複層林施業に関する研究が盛んになり、全国的に二段林の造成が進められた。二段林は複層林の代表的な林型であるが、更新木の成長不良や保残木伐採時における更新木への損傷等の問題が指摘されている。そこで近年では作業効率のよい施業法として、帯状・群状複層林施業が注目されている。しかしながら、帯状・群状複層林施業は比較的新しい施業方法であるため、成長量や林分構造に関する知見が不足している。そこで本研究では、過去48年間で3回の群状伐採が行われている大分県湯布院町九州電力社有林の群状択伐林を対象とし、過去に測定した三時期のデータを用いて、林分構造の推移を明らかにし、成長特性の評価を行った。

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複層林に関する研究(Y) −間伐率の違いと下木の成長並びに施業指針と現実林分との比較−
鶴崎 幸(福岡県森林技セ),佐々木重行
福岡県では、1983年から水土保全機能強化モデル事業の一環として、複層林(二段林)の固定プロットを設け、継続調査を行っている。今回は、造成後30年にわたる上木・下木の成長や10年前に実施した間伐(本数率20〜50%)後の下木の成長について報告する。また、本事業では、造成時、複層林施業指針を作成していた。そこで、この指針に基づく林分状態と現在の状態について比較し、今後の本事業地の施業について検討する。

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帯状伐採地におけるヒノキ植栽木の成長と無植栽区の天然更新状況
−大分県長期育成循環施業モデル団地を例として−
井上恵太,溝上展也(九大農),保坂武宣,作田耕太郎,太田徹志,加治佐 剛,吉田茂二郎 スギ・ヒノキの帯状・群状択伐方式の可能性を探るため、報告者らは十数年前より九州内のいくつかの帯状・群状択伐林において林分構造の調査をすすめてきた。その多くは、繰り返しが少なく、比較対照のない択伐区のみを対象とした調査に基づくものであり、皆伐林との比較したときの有効性評価においては収穫表を用いるなど間接的評価にとどまっていた。これらの欠点を補うべく、大分県民の森に約150haの長期育成循環施業モデル団地が設定され、帯状択伐区と皆伐区、植栽区と無植栽区が隣接して直接比較できるデザインになっている。本報告の目的は、これまでの6年間の調査結果をもとに、ヒノキ植栽木の成長と無植栽区における天然更新状況の観点から帯状伐採の効果を評価することにある。結果として、ヒノキ植栽木の成長は皆伐区と比較して総じて良好であり、無植栽区における天然更新木については大分県天然更新完了基準を満たすことが示された。