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屋久島固定試験地における年輪生態学的研究
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伊高 静(九大農),吉田茂二郎,溝上展也,太田徹志,高嶋敦史,加治佐 剛 | 屋久島の老齢スギ天然林では、約350年前に大規模伐採が始まり、伐採は約300年続いた。現在、屋久島におけるスギ林では、伐採後に更新したスギと、伐採を免れた老齢なスギが混在している。本研究では、屋久島のスギにおける、過去の撹乱時期や規模を、年輪生態学的手法を用いて解明することを目的とした。人為もしくは自然介入による撹乱を抽出するため、年間断面積成長量と年輪幅成長量変化の割合を算出した。その結果、1600-1900年代にかけての大規模な撹乱が存在し、供試木は撹乱後150年間、高い断面積成長量を示した。また、スギ更新木の発生時期は、高い断面積成長量を伴う撹乱の後であった。さらに、それら更新木は、切り株や伐倒木の上に更新していることからも、この様な撹乱は人為撹乱であると推測された。以上より、1600-1900年代の間に大規模伐採が行われ、それによっておよそ樹齢500-600年という老木の成長が促され、スギ更新にも重要な役割を果たしたことを明らかにした。 |
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屋久島の古地図を用いた潜在自然植生の推定と地図化
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神谷尚洋(九大生資環),吉田茂二郎,溝上展也,加治佐 剛
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貴重な生態系や植生を有する地域での植生の保全や復元を図る上で、本来の自然植生域の分布を把握することは、非常に重要である。これまで筆者らは、屋久島の古地図(1655年頃作成)に記載された資料と、現地調査データならびに既存資料を利用して、屋久島の代表的な樹種であるスギの潜在的分布域の推定を行ってきた。古地図にはスギ以外の樹種も数種記載されており、それらをスギと同様に復元することで、屋久島におけるより正確な自然植生を明らかにすることができると思われる。そこで本報告では、全体的な植生分布の推定にあたり、これまでの古地図の幾何学的補正を検討し、加えて昭和36年に作成された事業図から植生を再現し、より正確な分布推定を試みた。さらに、これをもとに江戸時代におけるスギの空間分布を明らかにし、その地図化を試みた。 |