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南九州山地河畔林における立地タイプの違いがハルニレ実生の定着に及ぼす影響
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原 賢太郎(宮大農),佐藤 妙,伊藤 哲
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南九州の暖温帯河畔域に生育するハルニレは、常緑樹が卓越する水辺林の重要な構成樹種である。既往の研究から、ハルニレの実生稚樹は樹冠構成種の常緑・落葉の違いや隣接河道上のギャップに依存した光環境、微地形、および土壌基質に影響を受けて生育していると考えられる。演者らは前報(第68回大会)において、微地形、土壌基質および光環境の異なる立地タイプを比較し、ハルニレの実生および稚樹の生育適地について報告した。しかし、ハルニレ種子が散布後にどのような流出過程を生残して定着に至るかに関して不明な点が残された。そこで本研究では、播種から定着に至るまでの種子および実生の生残率を時系列的に精査した。その結果に基づき、立地タイプの違いが更新初期段階におけるハルニレのデモグラフィーに与える影響を検討したので報告する。 |
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Additive partitioningを用いた暖温帯渓畔林における種多様性の評価
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麻生歩波(宮大農),安田盛樹,平田令子,伊藤 哲 | 渓畔林は重要な生態系として認知されているものの、現在ではその利便性から多くが消失または改変されている。本研究では渓畔林の保全・修復作業を行う際に着目すべき点を、植物種多様性の形成要因から明らかにすることを目的とした。種多様性の評価には加法分配(Additive partitioning) 法を採用した。この手法は多様性の構成要素を階層的に加算することで、出現種の異なるハビタット間での多様性比較やその統合比較が可能なため、多様なハビタットで構成される渓畔林のα多様性、β多様性およびγ多様性を階層的に評価できる。調査地は宮崎県高岡市去川国有林内の暖温帯渓畔林で、大部分がスギ・ヒノキの造林地である。植生調査は、微地形および光環境の違いを考慮して配置した120個のコドラート(1m×1m)において春に1度行った。その結果に加法分配法を適用し、対象渓畔林全体の植物種多様性に対する各ハビタットの貢献度を評価したので報告する。 |
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亜熱帯島嶼域の人工造林地に侵入した個体の種組成と植栽木との成長競合
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谷口真吾(琉大農),加藤嘉一,松本一穂
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沖縄島北部、国頭村有林の人工造林地に萌芽ならびに実生により定着した侵入木の種組成、侵入木と植栽木との成長競合などの把握を目的として、林齢の異なる人工造林地4林分を抽出し、12プロット(4m×40m/プロット)の毎木調査を行った。全12プロットに出現した個体総数は1343個体(36樹種)であり、植栽木は511本(6樹種)、残りの62%は侵入種であった。侵入種の種組成は用材価値の高い有用樹種が多かった。植栽木以外の侵入率は2年生造林地が73%と最も高く、残りの3造林地は35〜45%であった。植栽木と侵入木の樹高を比較すると、2年生造林地では萌芽個体が有意に高く、14年生造林地では植栽木が高い傾向であった。24年生、29年生造林地では実生個体が有意に高く、萌芽個体と植栽木は同程度であった。今後は植栽木と侵入木を同水準で保育し、密度管理の際には侵入種の樹種特性によって選択的に伐採することが必要である。 |
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皆伐地に侵入するキイチゴ属2種の地上部生産構造
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作田耕太郎(九大農),立石明子
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大面積や群状、帯状などある程度まとまった面積での皆伐によって明るくなった林地には、先駆性樹種を中心とした陽性広葉樹が速やかに侵入し、林地作業の大きな障害となる。これらには、針を有するキイチゴ属種も含まれ、地下茎で群落拡大を行うことから林地作業はもちろん、更新木の成長の妨げにもなる。発表者らは、大分県の大分県民の森を対象に、針葉樹人工林の針広混交林化について調査を行っているが、当地ではクマイチゴとナガバモミジイチゴの2樹種が存在する。特にクマイチゴは新規開設林道などにも侵入し大きな群落を構成している。これら2種の分布には偏りがあり、クマイチゴは光強度の高い皆伐地に、ナガバモミジイチゴは光強度が中庸な林縁に多く見られる。このような分布の相違は、植物生産生態学・植物生理生態学的観点からの相違と強く関係すると考えられることから、地上部の刈り取りによる生産構造の違いについて検討した。 |