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暖温帯ヒノキ人工林における植物種多様性とその成立要因
岩切康二(宮大院農工),外村浩幸,細見弘明,甲斐克則,高木正博,光田 靖,伊藤 哲 戦後の拡大造林により広範囲に植林されたスギ・ヒノキ人工林は、森林構造の単純化を引き起こし、森林の生物多様性を低下させたと言われている。また、針葉樹人工林では、林冠の閉鎖にともなって林床の光環境が悪化し、林床植生の生育が困難になりやすいとも報告されている。しかし、暖温帯に成立する天然林(照葉樹林)では、耐陰性を持ち暗環境でも生育可能な植物(照葉樹林構成種)が多数存在しており、人工林内の弱い光環境であっても生育可能な植物が多いことが推察される。本研究では、まず、宮崎県北部の暖温帯地域におけるヒノキ人工林内の下層植生を基にクラスター分析を行った。その結果、類似度75%で6つの下層植生タイプが検出された。そこで、これらの6グループ間の、林冠木の生育状況、下層植生の種組成および被度、光環境、微地形等を比較検討し、下層植生の種多様性およびその成立要因についての考察を行ったので報告する。

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ヒノキ人工林分における帯状伐採後の林床植生の初期遷移
衣笠由梨(九大生資環),作田耕太郎.谷口 奨 我が国では管理放棄された人工林が増加傾向にあり、森林の公益的機能の減退が問題視され、管理放棄された針葉樹人工林の針広混交林化や広葉樹林化等が行われている。本研究では、帯状伐採が実施されたヒノキ林分を対象とし、伐採直前・直後から8年目までの林床植生の遷移を把握することにより、針広混交林化を目的とした帯状伐採の初期効果の継続性について確認した。調査地は、九州大学立花口圃場内のヒノキ人工林分とした。この林分には、2004年に帯状伐採が行われ、その当時より東西50m、南北40mの調査プロットが設置されている。調査プロットは5×5mのコドラートに区切られ、コドラートごとに木本植物種の種名と位置などを記録した。個体数密度や樹種構成、樹高階頻度分布等の結果について検討したところ、帯状伐採が林床の植物種数や群落の発達へ与えた効果は、伐採8年目でも継続していた。

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帯状伐採が行われた針葉樹人工林分における伐採から5年目の林床植生
立石明子(九大生資環),作田耕太郎,溝上展也 近年、日本国内においては管理放棄された人工林が増加傾向にある。また、森林の生物多様性や水土保全機能を重視する観点から、管理放棄された針葉樹人工林の針広混交林化や広葉樹林化等が推進されている。針広混交林化では、伐採によって林冠を開いて広葉樹を導入する必要がある。林分平均樹高程度の幅で伐採を行う帯状伐採は、更新面が比較的広いことや林縁での生物多様性の上昇が期待できること等から有効な伐採法として着目されている。しかし、帯状伐採が行われた林分での天然更新の実態に関する報告例は多くない。本研究は、帯状伐採が実施されて5年が経過した針葉樹人工林における林床の植生を把握することを目的とした。大分県県民の森において2008年に帯状伐採が実施された3つの針葉樹人工林分を対象として、それぞれ林内、林縁、伐採部中央の3つの区分に分けた。区分ごとに4m四方の調査区を1ヵ所ずつ設定し、林床植生について区分間の比較を行った。