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地形に対する種交代の有無が林分の窒素・リン利用に与える影響
−九州大学北海道演習林のカラマツ人工林と落葉広葉樹天然林の比較− |
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桑原 花,菱 拓雄(九大農),前田由香,田代直明,榎木 勉 | 森林生態系の窒素(N)、リン(P)循環量は土壌条件だけでなく、樹種の養分利用特性も大きく影響する。本研究では九大北海道演習林において、地形条件により大きく種が入れ替わる天然落葉広葉樹林と、同等の立地条件幅に成立したカラマツ人工林の間で、養分循環量の可塑性の大きさを比較し、天然林から単一樹種造林への転換によって生じる養分循環への影響を明らかにした。カラマツ人工林および落葉広葉樹天然林の各々について、南北斜面の上部と下部、谷部に調査区を選んだ。41樹種、170サンプルについて、生葉とリターのC, N, P濃度を測定した。また、調査地ごとのリターフォール量を測定した。各林分における年間N、P循環量は、天然林、人工林ともに南斜面で小さく、沢や北斜面では大きかった。N, P循環量の変動幅は天然林の方が人工林よりも大きく、Nでは約4倍、Pでは約3倍の差が見られた。単一樹種造林は養分循環の可塑性を低下させると考えられた。 |
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保護樹帯によるリター供給が隣接ヒノキ人工林に与える表土保全効果
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山岸 極(宮大農),木崎功治,平田令子,伊藤 哲
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ヒノキ林は林冠が閉鎖しやすいことやヒノキリターが流亡しやすいことから、林床の裸地化とそれに伴う表土侵食が起きやすい。一方、保護樹帯に隣接する林分では、保護樹帯からの広葉樹リターの供給が期待されることから、表土侵食のリスクが軽減される可能性があると考えられる。しかし、保護樹帯による表土保全効果はこれまで明らかにされていない。そこで、本研究では保護樹帯からのリター供給による、隣接ヒノキ人工林の表土保全効果およびその範囲を明らかにすることを目的とした。調査は宮崎大学田野フィールドの斜面上部に保護樹帯のあるヒノキ人工林内の傾斜の異なる2つの斜面で行った。保護樹帯の林縁から水平距離で25mまでの範囲を5mごとに5区間に分け、各区間でリターフォール量、林床被覆率、土砂移動量、リター移動量、雨滴侵食量を測定した。これらのデータの分析を基に、保護樹帯からのリター供給が隣接斜面の表土保全に及ぼす効果を検証した。 |
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ゴムノキ農園で利用されるカバープランツ・ムクナ(Mucuna bracteata)の施肥効果
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玉泉幸一郎,古田貴士(九大農) | ゴムノキ農園では、ゴムノキの成長とラテックスの収量維持のために施肥を行っている。しかし、施肥にはコストがかかり、その経費の削減が必要である。対策の一つに窒素固定能を持つ地被植物の導入がある。近年、インドネシアのゴムプランテーションではマメ科植物のMucuna bracteataが導入、実用化されているが、その施肥効果は明らかにされていない。そこで本研究は、このムクナの養分供給能の定量的な評価を目的とした。調査地は、インドネシア・スマトラ島のゴム農園で、ムクナのバイオマス量、各器官の養分含量、及び土壌養分含量の調査を行った。バイオマス現存量は植栽後、1−2年で最大値となり、その後、ゴムノキの成長と共に低下し、植栽後7−8年で消滅した。養分含量のうち窒素についてみると、バイオマスが最大の時点での窒素現存量は、施肥により供給する窒素量に匹敵し、また土壌にも多くの窒素が含まれていた。ムクナは緑肥として役立つことが確認された。 |
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スギ、クヌギ、ケヤキの造林地における下刈り省力化の可能性
−佐賀県における下刈り回数低減、および防草シート設置による省力化の事例− |
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谷川直太(佐賀県林試) | 人工林の造林において、下刈り作業は多大な労力と費用を要するため、下刈り省力化の実現が期待されている。佐賀県では、2008年に植栽したスギ、クヌギ、ケヤキの造林地において、下刈り回数低減区、防草シート設置区、および通常下刈り区(対照区)を設定し、下刈り省力化の試験を行っている。試験地設定後5年(5成長期間)が経過し、植栽木の生育状況に関して、今後の下刈り省力化の検討に有用と思われる知見が得られたため報告する。また、雑草木の繁茂状況やコスト試算の結果も合わせて報告する。 |