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カンボジア在来種二種の樹齢と若木における強光ストレスが各樹種のサイズに与える影響
今岡成紹(宮大農),伊藤 哲,光田 靖,加治佐 剛,溝上展也 カンボジアには劣化した二次林が多く存在する一方、現地住民の森林資源の需要は高い。したがって、劣化した二次林を修復し、経済価値の高い森林に誘導する方法の確立が急務である。多くの熱帯樹種の特性として、若木の段階で強光ストレスが起きやすいことが一般的に知られている。そこで、有用樹種の樹冠下植栽による森林の誘導、いわゆる「エンリッチメント・プランティング」という手法が注目されている。本研究では、カンボジアにおけるエンリッチメント・プランティングに有用な知見をもたらすことを目的とした。測定対象は現地固有の有用樹種2種(Hopea属1種、Dipterocarpus属1種)とし、異なる時期及び条件で植栽された各樹種のサイズ(樹高、枝下高、地際直径、胸高直径、樹冠長)と光環境を測定した。このデータを基に、各樹種の樹齢ごとのサイズを一般化線形モデルで予測し、若木の段階の強光ストレスによる成長阻害について考察した。

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被圧から解放されたスギ植栽木の成長回復
福本桂子(鹿大農),寺岡行雄,山下盛章 植栽後7年間下刈りをせずに放置したスギ幼齢林において、下刈りを行った後の被圧から解放したスギ植栽木の成長状況を明らかにした。対象地は鹿児島県垂水市に位置する高隈演習林の8年生スギ幼齢林分(1500本/ha植栽)で、標高約600m、面積約0.2haである。植栽後7年目にあたる2013年1月に下刈り・除伐を実施し、比較のため一部を無下刈り継続区として残した。樹高、胸高直径、樹冠幅の測定を行い、各成長量、形状比、樹冠投影面積を算出し、無下刈りのまま放置した試験区と、下刈り・除伐を行い解放した試験区間で比較を行った。雑草木による被圧から解放された後の、スギ植栽木の成長量の違い、成長回復の過程を分析し報告する。

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スギの年間伸長量と成長フェノロジーとの関係解析
保坂武宣(九大農),玉泉幸一郎 造林木の初期伸長量の増大は下刈期間の短縮につながることから、人工造林の省力化において有効な手段と考えられている。このことから、造林木の年間伸長量を決定する内生・外生因子の把握が重要である。本研究においては、苗畑に植栽された5年生のスギ(シャカインスギ)に施肥を行い、年間成長量と成長フェノロジーとの関係を解析した。その結果、年間伸長量は成長開始時期や成長開始時の成長速度とは相関は認められなかったが、成長期間との間に相関が認められた。つまり、施肥を行った個体は長期間にわたり成長速度を維持することで年間成長量が多くなっており、無施肥の個体では、短期間で伸長速度が低下したために、年間伸長量は小さくなっていた。このことから、年間伸長量を多くするためには、成長期間を長くすることが重要であると考えられる。

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スギの伸長成長、肥大成長の成長フェノロジーの比較
奥田峻史(九大生資環),玉泉幸一郎 樹木の成長フェノロジーは気候に依存して変動する。このことから、樹木の成長フェノロジーに対する理解は、今後の気候変動による植生変動や成長予測に貢献すると考えられる。樹木の幹成長は伸長成長と肥大成長によって行われる。これまで伸長成長の測定の多くはマニュアルで行われてきたが、近年、連続的に植物の動きを記録できる装置が開発され、より細かな測定が可能になった。そこで本研究では、自動撮影装置と自動デンドロメーターとを用いてスギ(Cryptomeria japonica)の幹伸長と肥大成長の成長フェノロジーを明らかにすることを目的とした。実験には8本の苗木を用い、2年間にわたって測定した。2012年の幹伸長、肥大成長を比較すると、伸長成長は4月下旬に開始し9月中旬頃に終了したが、肥大成長は3月下旬に開始し、冬季まで継続する、というフェノロジーの違いが見られた。