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マツ材線虫病枯損マツの伐根におけるマツノザイセンチュウの生存年数
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田中一二三 (海の中道海浜公園管理セ),玉泉幸一カ,保坂武宣 | 通常、マツノマダラカミキリにより後食されたマツは急速に褐変してそのまま枯死に至る。しかし、個体によっては翌春に変色がおきて枯死する「年越し枯れ」、さらには後食を免れても、年数を経て枯死する「潜在感染枯れ」などの現象がある。根系癒合を経由して感染枯死する個体の発生形態は、これらの年越し枯れ、潜在感染枯れの現象とよく似ている。このことから、これらの枯損には根系癒合によるマツ材線虫病への感染が疑われる。これらの現象が根系癒合と関連していることを解明するためにはまず、伐根内におけるマツノザイセンチュウの生存年数を明らかにする必要がある。本研究では、伐倒履歴が明確な株とそれらと癒合している生木から材片を採取し、マツノザイセンチュウの有無をザイセンチュウキットにより確認した。これらの結果から、その可能性について議論する。 |
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1回の低温によるマツノマダラカミキリ幼虫の休眠覚醒
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吉田成章 | 2012年8月マツ小丸太に産卵をさせたマツノマダラカミキリ幼虫を20℃を下回らないように温度を制御して飼育した。2013年1月7日に、24℃から約15時間かけて11.5℃まで温度を下げ、その後14時間かけて24℃以上にするという操作を行った。約6か月後3頭が蛹化し、8か月後3頭が幼虫のままであった。休眠覚醒の条件とされる「15℃(10℃)で2か月」という低温に暴露しなくてもある程度の割合で幼虫の休眠が覚醒されることがわかった。 |
503 | 桜島におけるマツ材線虫病終息期のマツザイセンチュウの病原性 |
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宮田晃志(鹿大院農),槐島 大介,曽根晃一,畑 邦彦 | 桜島では1994年にマツ材線虫病が再発した。その後、被害は増加していき、2004年にピークに達した後、徐々に減少した。現在はマツ材線虫病はほぼ終息している。マツノザイセンチュウは系統別に病原性が異なり、強病原性のセンチュウ個体群は弱病原性個体群に比べ、樹体内での繁殖力や、移動力に優れ、多くの個体がカミキリに乗り移り、健全なマツに侵入すると報告されている。近年の被害の急速な終息の原因として、マツ大径木の減少、カミキリに対する各種防除の効果、火山活動の活発化などが考えられている。加えて2010年以降に捕獲されたマツノマダラカミキリのセンチュウ保有率や保有数は低下しており、センチュウの病原性の低下が影響している可能性が示唆される。そこで桜島から得た個体群をマツ苗に接種し、枯損率を求める接種実験を行った。被害拡大期の2000年のセンチュウ接種試験の結果と比較し、センチュウの病原性の変化と被害減少の関係について考察した。 |
504 | 同一林分の線虫接種検定合格クロマツを3年にわたって枯死させた マツノザイセンチュウの年ごとの病原性 |
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宮原文彦(福岡県森林技セ),大川雅史 | 福岡県糸島市桜井の海岸に、2007?2008年度に植栽された「筑前スーパーくろまつ(マツノザイセンチュウ(以下、材線虫)島原個体群による接種検定に合格した抵抗性クロマツ)」が、2010年度に55本、2011年度に312本、2012年度に52本枯死した。前々報で2010年度枯死木から分離した材線虫の病原性が極めて強かったこと、前報で2011年度枯死木から分離した材線虫ならびに2010年度分離し継代培養した材線虫の病原性が島原個体群程度の病原性であったことを報告した。今回、2012年度枯死木から分離した材線虫、ならびに2010年度分離および2011年度分離して継代培養した材線虫の病原性について報告する。 |