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スギ集団葉枯症の被害程度とその特徴
黒木逸郎(宮崎県林技セ),古澤英生
スギ集団葉枯症については、これまで発生要因や被害分布などが重点に調べられてきたが、被害林分における今後の施業のあり方を整理するには、被害の経年変化や品種による感受性の有無、成長や材強度への影響等を明らかにする必要がある。このため、今回、被害林分に0.5ha程度の調査区を設定し、区域内の全木についてDNA分析による品種の特定、被害グレード判別、ツリーチェッカーによる応力波伝播速度計測等を行ったので、その結果について報告する。

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講演中止

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沖縄島中部地域の恩納村仲泊地区で発生したフクギのファイトプラズマ病被害について
伊藤俊輔(沖縄県森研セ)
台風常襲地 域の沖縄では、フクギ(Garcinia subelliptica)は古くから屋敷防風林として植栽され、沖縄らしい景観を形成する重要な樹木である。このフクギに対し沖縄島中部地域に位置する恩納村仲泊地区で2002年頃からフクギの枯死が見られるようになった。また、黄化衰退した個体の一部から植物病原体であるファイトプラズマが検出された。しかしながら、この病原の検出は難しく、衰退木が全て罹病しているかどうか不明であるが、衰退の進展からこの樹病の特徴を明らかにする目的で、仲泊地区において、2009年から屋敷防風林として植栽されているフクギ203本 を対象に、衰退被害の進展と立地環境による衰退被害の差異について検討した。経過観察の結果、2009年6月時点での枯死個体の割合は3%であったのに対して、2013年6月時点での枯死個体の割合は12%と衰退が進んだ。

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マツ及びマテバシイ葉内に生息する糸状菌のリグニン分解試験
畑 邦彦(鹿大農),滝下裕己,曽根晃一
これまで本大会において、マツ及びマテバシイの葉から分離された糸状菌のリグニン分解能について、主としてバーベンダム反応試験を用いて調査した結果を報告してきたが、今回は培養分解試験の結果を報告する。マツ及びマテバシイの生葉または新鮮な落葉から分離された菌株を、マツまたはマテバシイの葉片を載せた素寒天上で8週間培養し、葉片を分解させた。培養後の葉片は硫酸及びオートクレーブ処理を行い、酸不溶性リグニンの含有率を求めた。対照区と比較して、マツ由来の菌株では4種について酸不溶性リグニンの有意な減少が見られたが、マテバシイ由来の菌株では見られなかった。これはバーベンダム反応試験の結果と大筋では一致した。一方、単独ではリグニンを分解できなかった菌を二種同時に培養することによって酸不溶性リグニンの有意な減少が見られた例があり、複数の菌種による協働的なリグニン分解が実際に起こりうることが示された。