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異なるトラップで採集した植林地・広葉樹林・林道沿いの
オサムシ科および腐肉食性甲虫群集の比較 |
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上田明良(森林総研九州)
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植林地とその周辺の環境の違いが生物多様性に与える影響をみる方法を開発するために、熊本県菊池市の50-60年生スギ・ヒノキ植林地、落葉広葉樹林と林道沿いで異なるトラップを設置してオサムシ科および腐肉食性甲虫を採集し、群集を比較した。ベイトなしのピットフォールトラップ(PFT)によるオサムシ科甲虫の捕獲では、林道沿いの群集は他と大きく異なっていたが、植林地と広葉樹林は同じであった。魚肉ベイトのPFTによる腐肉食性甲虫の捕獲では、各植生の間に群集構造の違いがあった。魚肉ベイトの衝突板トラップによる腐肉食性甲虫の捕獲では、各植生の間に群集構造の違いがなかった。ベイトなしのPFTは全体で66トラップを設置したにもかかわらず、トラップ数に対する種数が飽和しなかったのに対し、ベイトありでは6トラップで飽和し、省力的であった。以上のことから、今回の方法のなかでは、ベイトありPFTによる腐肉食性甲虫の捕獲がもっとも調査に適していると考えられた。 |
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オオスカシバによる立田山ヤエクチナシの食害試験
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金谷整一(森林総研九州),山本健一,松永道雄,河原畑 濃,宮崎 寛,中島 清,上田明良
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熊本市のほぼ中央部に位置する立田山では、普通のクチナシ(一重咲き)に混じって八重咲きの個体も自然分布することが1920年に発見され、1929年に「立田山ヤエクチナシ自生地」として国指定天然記念物となっている。その後の森林伐採や盗掘等により1973年を最後に自生地において八重咲き個体は確認されていない。近年、当該地のクチナシに対してオオスカシバの幼虫による葉の食害が著しく、自生地のどこかにまだ生残しているかもしれない八重咲き個体ならびに自生地周辺で系統保存されている個体への影響が懸念される。森林総研九州では、実験林の苗畑において、クチナシ類を同所でさし木増殖していたところ、八重咲き個体でオオスカシバの食害被害が多く観察された。そこで本報告では、オオスカシバの嗜好性の有無を確認するため、立田山ヤエクチナシ(八重咲き)およびクチナシ(一重咲き)に対する食害試験を実施したので、その結果を発表する。 |
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屋久島におけるカシノナガキクイムシの倒木上での繁殖
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後藤秀章(森林総研九州)
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カシノナガキクイムシ(以下カシナガ)は、シイ・カシ・ナラ類集団枯損の原因であるブナ科樹木萎凋病の媒介者である。屋久島では2007年の初被害発生以前から、カシナガの分布が記録されていた。その後一旦終息したが、2010年以降は被害が継続して発生している。被害発生前からカシナガが生息し、被害が再発したため、屋久島では被害木以外の倒木等で繁殖していると予想される。一方、被害木以外での繁殖については研究事例が少ない。そこで屋久島において倒木で繁殖したカシナガについて調査を行った。調査は穿入孔にトラップを設置して、脱出してくるカシナガを捕獲して行った。7月12日までの結果では、繁殖に成功した穿入孔で比較すると、倒木では被害木と比較して、カシナガの平均脱出数が約2倍であった.一方、調査した全穿入孔での比較では、それは約半分であった。また、脱出のピークは倒木上では被害木上よりも約2週間遅くなった。 |
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鹿児島県におけるマツカレハの大発生とその後の経過
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久保慎也(鹿児島県森技セ),東 正志
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近年、当県においてマツカレハの大発生は確認されていなかったが、平成22年から平成24年にかけて3箇所の松林で大発生し、松のほぼ全葉が食害される被害にあった。そのうち1箇所において、被害木のその後の経過を調査したのでその結果を報告する。 |