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次世代ゲノムシーケンサーを用いたクロマツ4塩基繰返しマイクロサテライトマーカーの開発
沖井英里香(九大農),白石 進 九州地域では,クロマツのマツ材線虫病に対する育種が先行して行われており,現在,第三世代抵抗性品種の開発のための基礎研究が進められている。マツ側の抵抗性機作にはいろいろな要因があるとされており,これらを支配する抵抗性関連遺伝子も複数あると考えられることから,より多くの抵抗性遺伝子を集積した品種の創出が必要となる。このような育種を進める上で,第一世代から第二世代,さらに第三世代への家系管理は,効率的な育種を行う上で不可欠となる。既に,クロマツでは,SNPの一塩基伸長法(single nucleotide primer extention, SNuPE)による親子鑑定システムを報告しているが,今回,より遺伝情報量が多く,従来の2塩基マイクロサテライトマーカーに比べ,タイピング精度が著しく高い4塩基繰返しマイクロサテライトマーカーを次世代ゲノムシークエンサーを用いて開発したので報告する。

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簡便・安価なDNA鑑定システムの構築
白石 進(九大農),沖井英里香,山下実穂
現在,DNA鑑定は林木においても,クローン鑑定や親子鑑定で広く使用されており,林木育種技術の進展と新品種の普及において不可欠の技術となっている。スギにおいても,MuPSやSSR(4塩基および2塩基繰返し)が開発され,実用化が図られている。一方で,鑑定に多大なコストと時間を要することから,その改善も望まれている。近年,DNAポリメラーゼの改良が行われており,低質DNA溶液を鋳型としてもPCR増幅が可能なポリメラーゼの開発が進められている。また,PCR反応液組成の改善により,低質DNA中に含まれるPCR阻害物質の影響を抑制し,増幅を可能にする添加化合物についても報告されている。本研究では,これらの最新情報をもとに,簡便かつ安価なDNA鑑定システムを確立したので報告する。