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タケニグサの発芽特性と法面緑化への利用
田代慶彦(鹿児島県森技セ)
近年、鹿児島県では北薩地域を中心に林道の切土法面に吹付緑化した植物が度重なるシカの食害を受け、裸地化している状況がみられる。これは、従来緑化に使用される植物が、シカの嗜好性が高い外来の牧草を主体としていることが原因である。そこで、シカ食害に強い法面緑化技術として、タケニグサ等のシカ不嗜好性植物による緑化試験を実施した。また、タケニグサの種子発芽特性を明らかにするために種々の試験を実施したので報告する。

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在来菌根菌の海岸クロマツ林への定着技術の開発
溝口哲生(溝長崎県農林技術開発セ),森口直哉,出田龍彰,貞清秀男 クロマツは菌根菌と共生することにより、海岸の厳しい環境においても生育が可能であると言われています。昔は、クロマツ林に堆積する松葉を燃料として利用するため、松葉掻きが行われていました。しかし、近年では松葉は利用されることなく、林内に堆積するようになりました。このような林内環境の変化により、クロマツと菌根菌の共生関係が崩れ、クロマツが次第に衰退し、クロマツ林が持つ公益的機能が充分に発揮できなくなることが懸念されています。そこで、クロマツ林の持つ防風・防潮等の機能を維持していくため、県内に分布する菌根菌を明らかにし、それらを活用して海岸クロマツ林へ菌根菌を定着させる技術を開発しました。

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鹿児島大学農学部附属高隈演習林のスギ成木および実生におけるアーバスキュラー菌根菌の感染状況の季節変化
木本遼太郎(鹿大院農),曽根晃一,畑 邦彦 我が国では樹木におけるアーバスキュラー菌根菌(AM菌)の研究はあまり行われておらず、それはスギにおいても例外ではない。昨年度の本大会では、鹿児島大学農学部附属高隈演習林のスギ人工林におけるスギの根のAM菌の感染状況について、5?10月においては成木、実生を問わずほとんどのスギ個体でAM菌が感染していると考えられると報告した。本年度は昨年度に引き続き、更に冬季のAM菌の感染状況を明らかにするために、高隈演習林のスギの成木および実生の根におけるAM菌の感染状況の通年調査を行った。高隈演習林の83年生スギ人工林のスギの根を採取し、根の根端部を10%KOH溶液と30%過酸化水素水に浸漬して脱色し、0.05%コットンブルーを含む乳酸で染色を行った。染色した試料の断片は微分干渉顕微鏡を用いてAM菌の感染状況を観察した。冬季においてもAM菌の感染は見られたが、感染率は夏季、秋季と比較して低かった。