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沖縄本島北部の森林における遮断蒸発量の観測
壁谷直記(森林総研九州),清水 晃,清水貴範,新垣拓也,古堅 公,生沢 均,大貫 靖浩
沖縄本島北部の森林における遮断蒸発量を把握する目的で、量水1号流域内に遮断プロット(5m×8m、立木密度2000本/ha)を設置した。このプロットのデータのうち、水年に対応する2010年1月1日〜12月31日までの1年間のデータを取りまとめて、樹冠通過雨量、樹幹流下量を算出しこれを降水量から差し引き年遮断蒸発量を算出した。これによると、樹冠通過雨率と樹幹流下率はそれぞれ72.3%および8.4%となり、年遮断蒸発量および遮断蒸発率はそれぞれ656.9mm、19.3%となった。この遮断蒸発率は、本州各地における既往の遮断蒸発率15〜20%の範囲に入っていた。一方、金城・寺園(2001)は過去に沖縄本島中部の南明治山試験地(立木密度13889本/ha)での遮断雨量観測から遮断蒸発率を27.5%と報告しているが、これらの違いは、主に立木密度に起因していると考えられた。

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微気象学的方法を用いた常緑広葉樹二次林における林分蒸発散量の推定
中村友行(森宮大農),高木正博 森林からの蒸発散量は人間が利用可能な水資源量に大きく影響するため、その把握が重要である。そこで本研究は暖温帯山地小流域における蒸発散量を明らかとすることを目的とした。宮崎大学田野演習林内の常緑広葉樹二次林において各気象要素を観測し、Penman-Monteith式により解析した。その結果、降水量の2割が蒸発散量として算出された。これは、同期間に同林分内で流域水収支法により観測された結果と概ね一致したことから、暖温帯常緑広葉樹林からの蒸発散量は比較的小さいことが示唆された。

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沖縄県北部山地の森林蒸発散量に関する研究(T)
?森林の蒸発散に関わる日射量等の放射要素の検討?
新垣拓也(沖縄県森研セ),生沢 均,壁谷直記,飯田真一,古堅 公,清水 晃 沖縄県北部地域の森林は亜熱帯島嶼特有の生態系を持つ、我が国でも珍しい森林地域であると同時に、本県の林業の中核地となっているが、この森林地域の環境を測定した結果はまだ少ない状況である。そのため沖縄県では、林業施業が森林環境に与えるインパクトを評価することを目的に、北部森林地域の気象データを蓄積するため、沖縄本島北部に広がるヤンバルの森に2009年6月から気象データの基盤となる気象観測露場を設置し、観測を開始した。2012年12月に気象観測露場に設置されている各観測機器を更新しており、現在に至るまで観測を継続している。そこで、今回は現在まで蓄積された森林気象データから、森林の蒸発散量に多大な影響を及ぼす日射量等の放射要素について検討する。

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沖縄の亜熱帯林における乱流変動法による水・熱フラックスの観測
松本一穂(琉大農),谷口真吾,高嶋敦史,新垣拓也,生沢 均,清水 晃 亜熱帯林の水資源保全等の機能を定量化し、今後の森林管理に活用することを目的として、2013年6月より沖縄本島北部の亜熱帯常緑広葉樹林において乱流変動法による森林ー大気間の水・熱交換量(フラックス)の連続観測を行っている。本発表ではこれまでに得られたデータを用いて行った初期解析結果について報告する。観測された乱流熱フラックスは有効エネルギーの約62%となっており、熱収支のインバランスが非常に大きかった。また、潜熱フラックスは顕熱フラックスとほぼ同様の値で推移しており、他の熱帯雨林や暖温帯林の一般的な結果と比べると、蒸発散量が少なく、その分の熱量が顕熱に配分されていることが示唆された。これは当該期間の降水量が記録的に少ないことにも起因していることが考えられる。今後さらに観測を継続して行い、様々な環境条件下でのデータを得るとともに、亜熱帯林の水・熱交換特性のパラメータ化を進めていく予定である。