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中国・海南島の五指山自然保護区における保護と開発 -地域住民との関係から-
呉書通
(九大地球社会)、百村帝彦
中国の海南島は亜熱帯気候下にあり、自然が豊富であり島嶼部独特の固有性の高い生態系の脆弱性を有している。これまで、経済発展のために林伐採が行われてきたため、陸地面積の6.84%が自然保護区に指定された。しかし、設置した自然保護区の多くは先住民の居住する貧困地域と重複して存在している。自然保護区の設立は、自然資源に依存して生活する周辺地域の住民にとって、必ずしも望ましいことではない。また自然保護区の設立は、経済開発を規制し、発展の障害となるため見直される場合が多い。 そこで、本研究は自然保護区管理と地元住民との関係を明らかにするとともに自然保護区の保護と開発を両立させる要素を探求することを目的とする。研究は、文献レビューによって課題を検討するとともに、五指山自然保護区周辺において保護区管理の実態を把握するために現地調査を行う。

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屋久島国立公園のガイドの実態と役割
新井愛那
(鹿大農)、枚田邦宏、奥山洋一郎
山岳ガイドには、「利用者の行動の抑制や誘導ができる可能性」や「対象地の現況把握や維持管理の担い手としての可能性」があると言われており、国立公園管理に対する役割が期待されている。そのため、利用者の約半数がガイドを同行している屋久島の縄文杉ルートにおいても、公園管理に対してガイドが何らかの役割を持つ可能性があると考えられる。そこで本研究では、縄文杉ルートに関わるガイドの実態と公園管理に対する役割について明らかにする。調査は、先行研究のレビューと2015年12月に公益財団法人屋久島観光協会ガイド部会長のM氏への聞き取りを行った。調査の結果、現在縄文杉ルートで活動しているガイドは約100名おり、ツアーガイドと個人ガイドの2種類に区別されることが判明した。また、個人ガイドとツアーガイドにはそれぞれ特徴があり、混雑緩和に対して違う役割を持つ可能性が考えられた。

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やんばる地域の国立公園化と森林業の課題と展望:公的環境管理と経済的資源利用のパラダイム
芝 正己
(琉大農)
沖縄島北部の国頭・大宜味・東村を中心とするやんばる地域は,県全体の森林面積の約26%(27,000ha)を占め森林率は80%を超える。ここは,絶滅が危惧される固有種や希少野生動植物の生息地域として,また,本島中南部地域の水源(約80%を供給)として重要な森林地帯である。一方,ここは古くから木材・林産物の生産・供給の場として森林業の中核をなしてきた。当該地域は環境省の「国立・国定公園総点検事業(平成22年度)」において新規国立公園指定候補地に選定されていたが,平成28年9月「やんばる国立公園」として正式指定される。今後,当該地域の森林の利活用と環境保全の問題は,従来にも増して地域社会を巻き込んだ複雑な状況を呈することが推測される。 本報告では,将来を見据えた”地域全体で支えていく森林の管理や経営の在り方”を模索することを目的に,「公的環境管理と経済的資源利用のパラダイム」について論考する。