201
MASを用いた人工林シカ被害対策の検討
北島 薫
(九大院生資環), 佐藤宣子、藤岡 薫
日本では、シカの個体数が大幅に増加することで、林業被害が深刻化している。本研究では、マルチエージェントシステム(MAS)を用い、シカの個体数増加による餌不足を原因として、人工林にて発生する植栽木の食害被害の対策案を検討する。下刈りの際に刈払う下層植生の量を調整することで、シカの餌不足を解消し、シカが植栽木に与える被害を軽減することが可能かについてシミュレーションを行った。シミュレーションの空間は下層植生が繁茂するよう設定し、植栽木とシカを配置した。毎年下刈り後に一定量の下層植生を残すように設定し、5年間で計5回の下刈りが行われる様子を観察した。シミュレーション結果から、人工林において下刈り時に刈払う下層植生の量を調整することは、シカの餌不足を解消し、シカが植栽木に与える被害を軽減することに繋がり、一定の範囲に生息するシカの頭数が増えると、1頭当たりが及ぼす食害被害は増加すると考えられる。

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空間スケールの違いが地形因子と樹高の関係に与える影響
米森正悟
(鹿大農)、加治佐剛、寺岡行雄
林木成長の予測や林業経営の判断基準として地位は重要な指標である。従来から、地位は林分内の上層木平均樹高から林分の代表値として用いられてきた。近年、航空レーザ計測技術の発展により、林分内の樹高分布を単木レベルで把握できるようになってきた。また、地形も詳細に計測可能となっている。地位に関する過去の研究において、地位の変動を表現するために、水分条件と密接に関連のある地形因子が取り上げられてきた。航空レーザ計測データを用いると、単木の樹高変動と地形因子との関係をより細かに解析することが可能となる。そこで本研究では、空間スケールを変化させた場合の地形因子と樹高変動との関係について検討した。

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固定試験地データを用いたヒノキ地位指数モデルのパラメータ推定
光田 靖
(宮大農)
九州南部では皆伐が進んでおり、その後の再造林が問題となっている。再造林後の成長と再造林コストとの兼ね合いで、再造林の是非について地位および地利の面から議論されることが多い。一方で、再造林樹種の選択については議論が不十分であり、きめの細かい樹種選択を考えることが必要であろう。そこで、本研究ではスギとヒノキの樹種選択を支援する情報を提供することを目的として、地形からヒノキの地位指数を推定するモデルを開発する。スギ地位指数モデルは既に開発されていることから、本研究の成果によって、地形条件から推定される地位指数によってスギとヒノキを比較することが可能になる。これまでの地位指数推定を目的とした研究では一時試験地のデータが用いられることが多かったが、本研究においては固定試験地の時系列データからモデルパラメータの推定を行う。