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マダケ地下茎の伸長速度
藤津 哲
作田耕太郎(九大農)、國師周平
近年、里山地域では管理放棄された竹林の拡大が顕著であり、拡大に伴う種多様性の低下などが社会的に問題視されている。そのため、竹林に対する多方面からの適正な評価を行い、竹林の拡大予防あるいは竹林を有効に活用するための方策について検討する必要がある。生物学的には、タケ類は樹木と異なって、地下茎が伸長してその頂芽ないし側芽から地上稈が発生する(発筍)というクローナル植物としての特異性を有し、成長様式については解明があまり進んでいない。本研究では、九州大学伊都キャンパス内の拡大の前線に位置するマダケの群落を対象として、地下茎を堀取って節間の長さを計測し、節間部位ごとの長さの変動より地下茎の伸長速度について推定することを試みた。

302
周辺個体が樹木の成長と枯死に及ぼす影響のシカ個体数増加に伴う変化
榎木 勉
(九大農)、菱 拓雄、田代直明
九州山地中央部に位置する九州大学宮崎演習林内のモミ・ツガ林では、林床を被覆していたスズタケの衰退が1990年代から観察され、2000年代には下層植生はほぼ消失した。30×70 mの調査区を1984年に設置し、樹高2m以上の木本の30年間の動態を調べた。樹木全体では、枯死率、加入率とも調査前期(1984-1996)と後期(1996-2014)で違いがなかったが、常緑広葉樹は後期で新規加入率が増加した。加入した個体のほとんどがシカが採食しないシキミとアセビであった。調査前期では周辺個体の断面積合計が大きい樹木ほど枯死率が高かったが、調査後期ではその傾向は見られなかった。一方、樹木の成長に周辺個体が及ぼす負の効果は全調査期間を通じて見られた。シカの採食や皮剥の増加により、樹木の個体間競争の枯死率への影響は見られなくなったが、シカの増加に関わらず個体間競争は樹木の成長に影響を与えていたと考えられた。

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宮崎県串間市に生育しているコウヨウザンの成長と材質について
上杉 基
(宮崎県林技セ)、三樹陽一郎
比較的成長が早いとされているコウヨウザンを宮崎県内に導入するうえで成長や材質の特性を把握しておく必要がある。2015年10月、宮崎県串間市の55年生28本のコウヨウザン林分を毎木調査し、1本を伐倒して樹幹解析と材質試験を実施した。林分の平均樹高は20.6m、平均胸高直径が37.3cmであった。樹幹解析の結果、初期成長は緩やかで、15年生以降に旺盛な成長を示し、55年生時も維持していることがわかった。また、材質試験では、応力伝播速度が224μs/m、気乾密度が0.37g/cm3、曲げ弾性係数が8.2kN/mm2、縦圧縮強さが37.5N/mm2、曲げ強さは54.8N/mm2の値が得られた。この結果と既存のデータを比較し、成長や材質特性について検討したので報告する。