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下刈り回数の省力化が植栽木の枯死に及ぼす影響
福本桂子
(九大生資環)、太田徹志、溝上展也、吉田茂二郎、寺岡行雄、加治佐剛
持続可能な森林経営を行う上で、初期育林コストを削減することが重要となっている。特に、下刈り省力化の技術体系の確立が求められてきた。下刈りを省いた場合、植栽木は成長した雑草木により被圧され、枯死に至る可能性があるが、下刈りの省力化と植栽木の枯死の関係を議論した事例は極めて少ない。そこで本発表では、鹿児島大学附属高隈演習林の幼齢林分を対象に、下刈り回数の違いがスギの枯死に与える影響を比較し、その結果を報告する。

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スギ幼齢木の成長と立地環境要因との関係
鶴崎 幸
(福岡農林試資源セ)、佐々木重行、宮原文彦、重永英年
低コスト再造林の技術開発の一環で、植栽木の樹高を指標とした下刈り要否の判断基準の研究が行われている(山川ほか、2016)。立地環境と樹高との関係が分かれば、あらかじめ成長の良い場所を予測できるが、既往の研究の多くが壮齢林に関するもので、下刈り要否を判断する必要がある2~5年生の幼齢林に関する知見は少ない。そこで本研究では、スギ幼齢木の樹高成長と立地環境要因との関係を明らかにすることを目的とした。2~5年生の25林小班(59プロット)のスギ樹高を計測した結果、林齢が高くなるに従い樹高が高くなったものの、ばらつきが大きかった。スギ樹高は、国土地理院10mDEMから計算した立地環境要因のうち 有効起伏量との間に正の相関が認められたことから、水分供給量が豊富な場所ほど成長が良いと考えられる。

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ヒノキ人工林における異なる間伐手法が土砂流出に与える影響
溝口拓朗
(宮大農)、伊藤 哲、平田令子
間伐が遅れたヒノキ人工林では、下層植生の消失による土砂流出が問題となっており、間伐による林床植生の回復が急務である。一方、間伐時には、集材作業により林床が撹乱されるため、これに伴う表土流出が懸念される。さらに、伐採地全体に伐採箇所が散在する定性間伐と、伐採列と保残列が形成される列状間伐では、表層土壌への影響も異なることが考えられ、特に表土が流出しやすい立地・土壌条件においては、間伐手法の選択は重要である。そこで本研究では、間伐手法の違いが土砂流出に与える影響を明らかにすることを目的とした。調査は熊本県中部に位置する国有林内の48年生ヒノキ林で行った。調査地において2015年6月に列状間伐区、定性間伐区、無間伐区を設置し、表土の移動量を9か月間計測した結果、列状間伐区の伐採列内(搬出跡)で最も大きい値を示した。この結果に基づき、間伐方法の違いが土砂流出に与える短期的な影響を考察したので報告する。