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先駆性樹種アカメガシワとカラスザンショウの発芽特性
鬼塚健太
(九大農)、玉泉幸一郎
先駆性樹種は攪乱後速やかに発芽してギャップを埋めることで、森林の更新に貢献している。アカメガシワ、カラスザンショウはどちらも暖温帯林の代表的な先駆性樹種であるが、これらの発芽特性は異なることが指摘されている。本研究では両種の人工庇陰下での発芽比較試験を行った。2016年4月に寒冷紗で相対光強度0%にして、素焼き鉢に播種された種子を置いた。6月10日に寒冷紗の一部を除去し、相対光強度100%、25%、0%の条件をつくった。8月3日には、さらに寒冷紗の一部を除去し、光環境を変化させた。発芽数の観察は、1、2日間隔で行った。アカメガシワは全ての光条件、カラスザンショウは100%と20%でのみ発芽が見られ、アカメガシワはカラスザンショウよりも広い範囲で発芽が促進された。この結果は、アカメガシワはカラスザンショウよりも休眠打破の閾値が広いことを示しており、両種が異なる生存戦略をとっていることを示唆している。

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センダンの樹高成長と芽かきの期間に及ぼす施肥の影響
横尾謙一郎
(熊本県林研指)、村田功二、小川健一
熊本県ではセンダンの幹を通直にする施業である「芽かき」を考案し、普及を行ってきた。ただし、センダンの生産目標は材長4mの直材とされているため、芽かきは地上高4m以上まで実施する必要がある。また、芽かきに必要な期間は樹高成長に頼るところが大きい。そこで、植栽1年後のセンダン芽かき試験林(平均樹高1.9m)に施肥(化成肥料または酸化型グルタチオン)を行い、植栽2年目における樹高成長に与える影響と芽かきの期間について検討したので、その内容について報告する。

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亜熱帯広葉樹林における皆伐後4成長期までの更新実生の動態
谷口真吾
(琉大農)、日暮悠樹、松本一穂
亜熱帯広葉樹林を皆伐した天然下種更新地において、更新面の微地形(凹凸)の違いが更新実生の動態に及ぼす影響を4成長期間、継続調査し、目的樹種を早期に再生させるうえで、十分な数の更新樹種(遷移後期種および有用樹種)の実生が確保できるかを検証した。更新実生の凹斜面での出現種数は成長期ごとに増加し、遷移後期種の定着が年々増加した。凹斜面の成長期ごとの出現本数は凸斜面に比べて1.3~1.9倍多くみられた。一方、更新実生の凸斜面での出現種数は4成長期とも凹斜面よりも多かった。凸斜面の出現本数は4成長期とも凹斜面、林内よりも少なかった。凹、凸斜面における更新実生の平均樹高は各成長期で、常に凹斜面が凸斜面よりも高かった。また、凸斜面は凹斜面に比べて、更新実生の成長が遅い傾向であった。伐採地に出現した遷移後期種はイタジイ、シマミサオノキ、シシアクチなど32種、有用樹種はイタジイ、イジュ、クスノキなど10種であった。

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沖縄島やんばる地域における戦後の伐採から再生した二次林の動態
高嶋敦史
(琉大農)、稲福真一
沖縄島北部のやんばる地域で、戦後伐採された後に再生し、現在約65年生に達していると推定される二次林の動態を調査した。現状を7年前の調査結果と比較すると、林分構造に大きな変化はないものの、幹本数密度と胸高断面積合計はともに微減していた。優占種の中では、第1優占種のイタジイで胸高直径10~20cm前後の比較的細い幹が減少しており、幹間競争が進んでいる様子が見てとれた。一方で、イスノキの胸高直径5~10cm前後の幹が増加しており、遷移後期種の定着が進んでいる様子も見てとれた。優占種の直径成長量は、全サイズの幹の平均でイタジイが0.15cm/年、イジュが0.12cm/年、イスノキが0.05cm/年となっており、この林分に生育する樹木の成長速度が緩やかであることも確認できた。また、将来のイタジイの直径階別本数分布をこれらの成長量や枯死率から行列モデルを用いて予測すると、42~63年後(更新開始約110~130年後)あたりで平衡状態に落ち着く結果となった。