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デンドロメーターの装着が幹の成長に及ぼす影響
玉泉幸一郎
(九大農)
温暖化は樹木の成長フェノロジーに影響を及ぼし、その成長量を変化させていくことが予想されている。今後、樹木の成長変化量を正確に予測するためには成長フェノロジーをモニターすることが重要となっている。幹の成長フェノロジーを測定する装置としてデンドロメーターがある。デンドロメーターには対象とする測定箇所により、円周タイプ、直径タイプ、半径タイプがあるが、これらは、いずれのタイプにおいても幹と直接接触することから、接触部位における成長への影響が懸念される。しかし、このような観点からデンドロメーターを取り扱った報告は見られない。今回の報告では半径タイプのデンドロメーターをスギに粗着した場合の幹の成長への影響を明らかにすることを目的とした。15年間にわたり幹の成長フェノロジーを測定してきたスギを対象として、デンドロメーターの設置部位とその周辺の材について成長量や材密度を比較して、影響の有無を検討した。

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可動式幹呼吸測定装置の開発と測定例
大西裕子
(九大生資環)、玉泉幸一郎
幹呼吸は森林生態系の地上部炭素収支の主要な構成要素である。幹呼吸の測定装置には、固定式と可動式が用いられるが、固定式ではサンプル数が限定される、可動式では継続測定が難しいなどの欠点がある。また、幹呼吸の測定方式としては閉鎖式と開放式があるが、閉鎖式は装置の構成が簡便なものの測定系を密閉状態にすることが難しい。一方、開放式は構成が複雑であるが、測定が容易であるなどの特徴がある。今回は、スギを対象として短期間に多くの個体で測定することを目的としたことから、可動式の呼吸測定装置を開発することとし、また、スギの樹皮は平滑でなく密閉することが難しいことから、開放式を採用した。開発した可動式呼吸測定装置を用いて、九州大学貝塚圃場に植栽されたおよそ25年生のスギを用いて、2016年10月に幹の高さごとの呼吸や枝の呼吸の測定を行った。

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針葉樹と広葉樹のシュートにおける通水性と貯留水との関係解析
姫野早和(九大院生資環)、玉泉幸一郎 針葉樹と広葉樹は大きく異なる通水性を示すことから、水利用に関して異なる適応戦略を持つと考えられる。樹木は蒸散に伴う水分消失を樹体の貯留水で補っているため、通水性の低い針葉樹では、貯留水を多くして通水性の低さを補っていると予想される。本研究では、針葉樹と広葉樹のシュートを用いて、通水性と貯留水のトレードオフ関係を明らかにすることを目的とした。2016年の8月から9月にかけて針葉樹と広葉樹の十数種からシュートを採取し、実験を行った。採取したシュートは一晩吸水させて水分状態を回復させた後、長さを10cmに揃えて、プレッシャーチャンバーに固定した。チャンバー内に一定の圧をかけた状態で滲出量を計測し、時間当たりの滲出量を通水コンダクタンスとして算出した。さらに、圧を上昇させておよそ1.0MPaまでの滲出量を貯留水量とした。これらの結果から、通水性と貯留水との関係を解析した。