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光質の違いがスギの発根に及ぼす影響の評価
栗田 学
(林育セ九州)、福山友博、竹田宣明、佐藤譲治、大平峰子、武津英太郎、倉原雄二、松永孝治、倉本哲嗣、渡辺敦史
多くのスギ人工林が主伐期を迎え、再造林用の苗木の安定的な供給が課題となっている。近年、気候変動や季節に影響されることなく農作物等の安定供給を可能とする植物工場を利用した生産技術が実用化されている。植物工場化によるスギ苗木の安定生産技術の開発を目的に、光質の差異がスギの発根に及ぼす影響を調査した。今回我々は、3種類の異なる植物育成用LEDライト(赤色単色:LED波長630nm、青色単色:LED波長460nm、赤・青混合色:LED比率赤:青=165:60(各色の波長は単色LEDと同じ))を設置したさしつけ環境を準備し、それぞれの波長とスギの発根率の関係性を調査した。また、明期を8時間、12時間、16時間、24時間と変化させることによって、発根と日長の関連性について調査を行った。その結果、青色光区、24時間の連続明期条件下において高い発根率が得られる可能性が示唆された。これらの成果に基づき、植物工場によるスギの苗木生産の可能性について議論を行う。

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ヒノキ苗育苗におけるフルボ酸の効果の検証
蛭子雄太
(佐賀県林試)
フルボ酸は、植物などが微生物により分解される最終生成物である腐植物質のひとつで、植物に鉄などのミネラルを補給する役目を担っている。野菜などの生育にフルボ酸が有効あることの事例はあるが、樹木の苗木育苗に対する効果は不明である。ヒノキの挿し木苗育苗におけるフルボ酸の効果を検証した。少花粉ヒノキの発根した挿し木苗を平成27年9月に苗畑に床替えし、平成28年3月から(1)週一回液肥を葉面散布、(2)週一回液肥+二週間に一回フルボ酸溶融液の葉面散布を行った。その結果、平成28年8月時点で、(2)のフルボ酸溶融液処理区の苗高・根元径生長が有意に高く、フルボ酸溶融液の効果が認められた。

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電熱温床によるさしつけ床の加温条件下で育成したスギさし木苗の得苗率と植栽後の成長
倉本哲嗣
(林育セ九州)、千吉良治、栗田 学、竹田宣明、武津英太郎、倉原雄二、松永孝治、戸高竜一
九州では、今後再造林に用いるスギ苗が大量に必要であると見込まれている。九州地域はスギさし木造林地帯であることから、主にさし木苗が生産・利用されている。しかし、スギさし木苗は年により得苗率が変動する。スギさし木苗の得苗率の安定させるための一つの方法として、スギのさし木苗を育成する際、電熱温床でさし床を加温し、発根率を向上させることが考えられる。しかし、さし床の加温による発根率の変化について、系統毎に検討した事例は少ない。また、電熱温床によるさし床を加温した条件下では、より短い時間で根が発生することから、苗の根量も多い傾向となり、植栽後の成長や活着率に影響する可能性が予想される。そこで、スギエリートツリーや精英樹について、通常のさし床と電熱温床を設置したさし床でさし木を行った後の得苗率、及びそれぞれの条件で発根させた苗の造林地に植栽した後の活着率及び成長について調査したので報告する。