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スギ丸太を加害する穿孔性害虫とその加害時期
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久保慎也 (鹿児島県森技総セ) |
近年、丸太(原木)は、年間を通じて安定的に供給することが求められている。そのため、素材生産(伐採・搬出)が、従来回避していた伐倒丸太に被害を与える穿孔性害虫(以下、穿孔虫)が多発する時期にも実施されるようになった。穿孔虫の被害を受けた丸太は安価で取引され、木材市況を低迷させる要因の一つとなっていることから、防除対策が必要となっている。そこで、防除対策を検討する上の基礎資料として、2014年3月からスギ立木を毎月伐採し、山土場1箇所と原木市場3箇所において、玉切った丸太と衝突板トラップを設置し、飛翔している穿孔虫や丸太を加害している穿孔虫、加害時期を調査している。本発表では、これらの調査から得られた結果を報告する。 |
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沖縄島北部の森林における主要造林樹種に対するキクイムシ類の寄主選好性
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後藤秀章 (森総研九州)、古堅 公、松本隆亮、新垣拓也、清水 晃 |
沖縄北部地域は、多くの固有種の分布する亜熱帯島嶼特有の生態系を持つ一方で、様々な森林施業が行われている。近年では木材生産の場でも生物多様性の保全に配慮が求められ、多様性の保全と森林利用の両立は緊急の課題である。これまでこの地域の森林の保全に資する目的で、様々な施業が穿孔性昆虫に与える影響について調査してきた。その中で造林後の森林では、天然性林と比較して穿孔性甲虫類の個体数や種数が少ないことがわかってきた。その原因として、穿孔性昆虫の造林樹種に対する寄主選好性が低い可能性が考えられる。そこでこの地域の主要な造林樹種であるイスノキ、イジュ、エゴノキ、リュウキュウマツと、多くの天然性林で優占するイタジイの丸太を林内に放置し、そこに穿孔するキクイムシ類を捕獲することで、これらの樹種に対する選好性の違いを検証した結果について報告する。 |
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韓国のコウライナガキクイムシ集合フェロモン物質へのキクイムシ類の反応
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上田明良 (森林総研九州)、後藤秀章 |
韓国のナラ枯れ媒介虫、コウライナガキクイムシ(Platypus koryoensis)が2010年に大分県由布市のコナラ集団枯損被害地で発見された。韓国での本種の集中攻撃には集合フェロモンが関与していて、その成分がシトラールを主体とした4種の揮発物質であることが明らかにされている。そこで、我が国においても韓国で同定されたフェロモン物質が有効であるかをみるために、由布市の被害地でシトラール単体および4種混合液を誘引剤とし、これに協力剤としてエタノールを用いた衝突板トラップによる捕獲調査を行った。その結果、コウライナガキクイムシの捕獲はわずかで、対照(誘引剤なし)区よりも有意に多く捕獲される試験区がなかったことから、我が国と韓国の間でフェロモン物質が異なる可能性が示唆された。他のキクイムシ類をみると、ミカドキクイムシ(Scolytoplatypus mikado)で、シトラールおよび混合液がエタノールの誘引効果を下げる効果があると考えられた。 |