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くくりわなと誘引餌・障害物を組み合わせた効率的なニホンジカの捕獲方法
桑野泰光
(福岡県農林総試資源セ)、楢﨑康二、佐々木重行、池田浩一
福岡県では、シカによる農林業被害を軽減するために積極的な捕獲を推進しているが、生息数は依然として増加している。また、捕獲を担う狩猟者の減少に加え高齢化も進み、現状以上の捕獲数を達成することが困難になりつつある。さらに、福岡県ではくくりわなによる捕獲が増えているが捕獲効率の向上が課題となっている。そこで、効率的で労力のかからない捕獲技術を開発するために、くくりわなと誘引餌や障害物を組合わせた捕獲方法について検討した。誘引餌としては岩塩よりもヘイキューブが優れていたが、福岡県において誘引可能な場所は少なかった。誘引餌とくくりわなを組合わせた捕獲方法は捕獲効率の向上に効果が認められなかった。シカ道上に高さ20~30cmの障害物と障害物から約30cmの位置にくくりわなを設置する方法は、わなのみ設置した場合と比較して捕獲効率が2~3倍向上した。

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シカ侵入防止柵の形状改良による跳び越え防止効果について
川中 守
(熊本県林研指)、廣石和昭
造林地では、シカ侵入防止柵(以下「シカ柵」)の設置による被害防除策が広く普及しており、熊本県内でもシカ柵の設置延長は年間約300kmと膨大な距離で推移している。その一方で、シカ柵の設置費用を含めた造林コストの増加が、林業収益の減少を招いており、また、一部にはシカの侵入を許してしまうケースがあるなど、林業経営意欲を減退させる要因となっている。そこで、本研究ではシカ柵の跳び越えによる侵入ケースについて、低コストな資材を使い侵入防止機能を強化する構造を検討した。調達が容易で安価な農業用ビニルハウス資材を使って、柵の上部をせり出す形状にした忍び返し型の柵を設置し、跳び越え防止効果について調べたので、その結果を報告する。

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カメラトラップにより推定したホンドタヌキのハビタット利用の季節変動
坂口悠紀
(鹿大院農)、畑 邦彦、曽根晃一
ホンドタヌキは、様々な環境への適応性が非常に高いため、食性や行動圏は生息地によって異なると考えられる。タヌキの生態を明らかにするため、鹿児島大学農学部附属高隈演習林内の人家に近い所6ヶ所(里山側)、人家から離れた所9ヶ所(山奥側)、その中間3ヶ所(中間)に自動撮影カメラを2015年5月から設置し、タヌキの撮影日時を記録した。カメラが撮影可能な状態だった日数を稼働日数とし、撮影頻度(撮影回数/稼働日数×100)を算出した。その結果、季節により活動域に違いが見られ、秋に撮影頻度が高くなった。また、疥癬病に罹病した個体が7月から8月に多く見られたため、その脱毛の状態の特徴から個体識別し、個体の行動パターンを調査した。個体により行動域に差が見られ、里山側と山奥側を頻繁に往復する個体と、主に山奥側でのみ頻繁に見られた個体がいた。これらの結果から、タヌキの行動の季節変動と個体の行動圏を推定する。

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ネコの里山への侵入
曽根晃一
(鹿大農)、笠このみ、畑 邦彦
ネコは中山間地域ではしばしば集落周辺の森林に侵入し、鳥類や小動物を捕食するので、里山の生態系に重要な影響を与えていると考えられる。そこで、鹿児島県垂水市大野原集落で飼育されているネコが、隣接する鹿児島大学農学部附属高隈演習林への侵入状況を、自動撮影装置を使って調査した。2015年4月から12月にかけて、林内18カ所に、赤外線センサースウィッチつきのカメラとビデオカメラを設置し、ネコを撮影した。毛の色や模様、体のサイズから識別できた19個体のうち、11個体が林内で撮影された。森林へ恒常的に侵入する個体とまれにしか侵入しない個体が見られ、侵入程度の差は、民家への依存度と関係していた。侵入個体のほとんどは、集落近くで撮影されたが、恒常的に森林で生活していると考えられる個体が、集落から離れた林内で撮影された。頻繁に撮影された個体の行動範囲は3?以上と推定された。