707
沖縄本島北部森林地域における森林変動の把握
新垣拓也
(沖縄県森研セ)、壁谷直記、清水 晃、清水貴範、古堅 公、生沢 均、中村智恵子、寺園隆一
沖縄本島北部地域の森林は亜熱帯島嶼特有の生態系を有する我が国でも珍しい地域であると同時に、沖縄県の林業の中心地でもある。そのため、貴重な森林生態系を含めた包括的な環境保全と適正な資源活用の両立が強く求められている。このような状況に対応して我々は、2009年からさまざまな施業履歴をもつ森林を対象に各種施業の影響や森林成長による変動の把握を目的として、気象観測露場および林内微気象観測サイトを設置し、当森林地域における微気象変動モニタリングを継続してきている。今回、林内微気象観測サイトの設置時に行った林分調査から一定期間を経過したことから、これらの森林サイトを対象に詳細な林分及び植生調査を実施している。今回は、これまでに得られた結果の一部を報告する。

708 沖縄本島北部の森林流域における降水・渓流水の安定同位体組成について
壁谷直記
(森林総研九州)、清水 晃、一柳錦平、清水貴範、大貫靖浩、生沢 均、古堅 公、新垣拓也、中村智恵子、寺園隆一
沖縄本島北部の西銘岳周辺で降水および渓流水を採取し、水の安定同位体組成を調べた。降水は西銘岳森林気象露場に設置した自作の雨水採取コレクターにより毎月採取した。また、渓流水は西銘岳源頭部およびチイバナ1号の2か所において、毎月、気密性の高いガラスバイアルに採取した。それらの水素および酸素同位体比を、熊本大学理学部の水同位体アナライザー(Picarro 2120i)を用いて分析した。その結果、沖縄本島北部においても日本の本土と同様に、降水の安定同位体比から得られたd値(=δD-8*δ18O)には、明瞭な季節変化が見られ、その季節変化は、渓流水中にも残存していることが明らかになった。降水のd値の季節変化は雨をもたらす水蒸気団が海面で蒸発する際の環境条件が季節変化していることを示していると考えられた。

709
ヒノキ人工林におけるスプラッシュカップを用いた雨滴エネルギーの計測
篠原慶規
(九大農)、久保田哲也、南光一樹、市野瀬桐香
近年、管理不足のヒノキ人工林において深刻な土壌侵食が報告されているが、森林内の土壌侵食を生み出す雨滴エネルギーの実態は十分には把握されていない。本研究では、安価で大量に雨滴エネルギーを計測可能なスプラッシュカップを用いて、ヒノキ人工林3林分(13年生、32年生、61年生)にて、雨滴エネルギーの計測を行った。スプラッシュカップの砂の減少量(雨滴エネルギー)は、13年生、32年生、61年生の順に大きくなり、その空間的ばらつきは、61年生、32年生、13年生の順に大きくなった。雨滴エネルギーの空間的ばらつきは、林内雨量の空間的ばらつきの影響を強く受けていることが示唆された。これまで、雨滴エネルギーの空間的ばらつきは考慮されてこなかったが、今後、データの蓄積を行う際は、空間的ばらつきを考慮して計測することが望まれる。