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平成28年(2016年)熊本地震によって生じた林地被害状況調査
黒川 潮
(森林総研九州)、北村兼三、壁谷直記
平成28年(2016年)熊本地震においては、4月14日21時26分に発生したマグニチュード6.5の前震に続いて、4月16日1時25分にマグニチュード7.3の本震が発生し、ともに最大震度7を記録した。一連の地震活動により建物の倒壊や土砂崩れ等が発生し、地震の直接的な被害による死者は50名となった。林業関係では山腹斜面における崩壊が発生した他、林道の法面崩壊、山腹崩壊箇所における森林の被害、木材加工施設、きのこ栽培施設の破損が確認されている。地震発生以降、森林総合研究所は林野庁、九州森林管理局、熊本県と連携して林地の被害状況について調査を行っており、その結果について報告する。

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平成28年熊本地震による阿蘇山地の林地斜面災害の特徴について
久保田哲也
(九大農)
平成28年4月14日と16日に発生した平成28年熊本地震では、2回の震度7を始め熊本・大分両県で強い揺れが生じた。幸い降雨が少ない時期ではあったが、震源が阿蘇火山地域に近く、南阿蘇村を中心に、山地に大規模崩壊や多くの地すべり・森林斜面崩壊が発生した。また、地震後の強雨での森林斜面崩壊・土石流も発生しており、これらの現地を踏査したので、その特性についても報告する。まず、外輪山カルデラ壁の林地急斜面では、地震力が集中し易い凸型急斜面の尾根近くにおいて、大規模崩壊を含む火山灰と風化溶岩類などの崩壊(土砂量数百m3~数十万m3)が多数発生した。中央火口丘群周辺でも表層崩壊が多数発生した他、緩斜面においては大規模地すべりも発生した。また、森林斜面には地震による亀裂が多数認められ、震後の降雨による災害が危惧されていたが、梅雨期には、既往災害雨量の60~80%程度の降雨でも崩壊などの発生が多数認められた。

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日射量欠測値の補完方法の検討II 地域的な差異の検討
北村謙三
(森林総研九州)
陸域生態系における熱収支や物質循環の現象解明に不可欠な気象要素である日射量の時系列値について気象庁のアメダスデータを用いて推定する方法を検討した。今回は、日射量推定式の中の係数に地域的な差異がどの程度あるのかについて報告する。