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中国における三農問題の政策の変遷と農家楽の実態
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唐 玉芬 (九大生資環)、藤原敬大、佐藤宣子 |
中国では改革開放以降、急速な経済発展の一方で都市と農村の格差が拡大している。「三農問題」は重要な政策課題であり、2005年の「一号文件」で社会主義新農村建設を通じた農民の収入増加が掲げられて以降、毎年一号文件の中で取り上げられている。本研究は、主に政策及び文献のレビューを通じて、三農問題の政策の変遷を分析した。2007年からの一号文件では「農民の収入の持続的な増加を促す」ために「グリーンツーリズムと郷村旅行の発展」が重点課題の一つとして位置付けられていた。またグリーンツーリズムの一形態である農家楽は、1990年代には実施されている地域も限定的で増加速度も緩やかであったものの、2000年代に入ると急速に全国へ拡大したことも分かった。本発表では四川省宜賓市蜀南竹海における農家楽の経営実態に関する現地調査(2017年8月実施予定)の結果についても報告し、三農問題の解決手法としての農家楽の可能性についても考察する。 |
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生産森林組合の解散とその後の森林管理実態―福岡県糸島市における地縁法人化の事例―
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河野大志
(九大農)、佐藤宣子 、 藤原敬大 |
現在、入会林野の整備のために設立されてきた生産森林組合の多くが、林業の低迷や税負担による経営悪化に直面し、解散を選択せざるを得ない状況に追い込まれている。解散後の動向としては、認可地縁団体制度を利用した地縁法人化や記名共有化、個人分割化等が報告されている。しかし、生産森林組合解散後の森林管理実態について明らかにした報告は少ない。そこで、本報告は、福岡県糸島市親山地区を調査対象として、生産森林組合の設立から解散、地縁法人化までの経緯、及び森林管理の状況や地区住民の参加実態などについて考察することを目的とする。方法は、①生産森林組合、及びおやま里山保全会の資料分析、②親山地区32世帯のうち組合員28世帯へ聞き取り調査を行う。 |
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沖縄島北部やんばる地域での森林認証制度運用の可能性について
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芝 正己
(琉大農) |
2016年9月の「やんばる国立公園」の担保処置を受け,世界自然遺産登録「奄美大島,徳之島,沖縄島北部及び西表島」を視野に入れた諸活動が活発化している.当該地域の持続的森林管理SFM という視点に立てば,「公的環境保全と地域的資源利用」という重層的な管理原則の体現化が求められていると言える.その鍵となるのが,長期的な資源量温存のための森林整備・管理技術の継続性,経年的生態系サービスを担保する保全管理の仕組み, 地域的な連携性,等の構築であると考える。国際的なFSCやPEFC, 国内型のSGEC(2016年6月PEFCと相互承認)等の森林認証制度は,創設時期,運営団体や審査基準,適用地域などは異なっているが,着実に広がりを見せSFMの実行ツールとして重要な役割を果しつつある。本報告では,先行事例を参考に,やんばる地域での森林認証制度運用の可能性を検討した。 |
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造船用材調達の観点からみた琉球王国時代の森林資源管理政策
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知念良之
(鹿大連合農)、芝 正己 |
首里王府は,1730年代以降,夫役による造林と台帳による資源の保護・管理を政策的に展開した。1737年以降,物資運搬や漁労目的で使用されていた小舟については,資源保護を目的に大木を刳り抜いて製作する「クリ舟」を禁じ,板材を継ぎ合わせて製作する「ハギ舟」への転換を奨励する政策をとったが,廃藩置県後の諸規制撤廃で宮崎産スギ材が移入されるようになるまでハギ舟はほとんど普及しなかった。本研究では,島嶼における森林資源の保護政策という観点から,ハギ舟普及の阻害要因を史料や文献の分析を基に考察した。琉球列島のサンゴ礁海域では,ハギ舟より軽量で操作性の良いクリ舟が好まれ,その優位性から首里王府は公用のクリ舟の存在を認めざるをえなかった。また,同時期の政策では農業の奨励と漁業の抑制を行い,税金もハギ舟はクリ舟に対し,50倍に設定された。これらがハギ舟製作技術の発展を阻害し,性能を停滞させた主要因といえる。 |