307
強度間伐実施10年後の林分における下層植生の発生状況
寺本聖一郎
(熊本県林研指)、今村高広、前田勇平、横尾謙一郎、川中 守、宮島淳二、高田琢也、堀 功一郎
熊本県では平成17年度から、針広混交林化促進事業を実施している。本事業は間伐される見込みのない人工林に対して本数間伐率約40%の強度間伐を行い、広葉樹の侵入を促進して針広混交林化を図り、森林の公益的機能の持続的発揮を目的としている。しかし、間伐実施後に広葉樹が導入され、公益的機能が図られる健全な林分構造に誘導されているのか把握されていない。そこで本研究では、球磨地域のスギ・ヒノキ人工林17林分において、10年後の上層木、導入された下層木の生残および成長量、林内照度を測定した。以上の結果から、針広混交林化を目的とする強度間伐の効果を検討したので報告する。

308 発達段階の異なる伐採跡地植生の土砂流出抑制効果
溝口拓朗
(宮大農)、伊藤 哲、山岸 極、平田令子、光田 靖
森林を伐採すると土砂が流出しやすく、これを最小限に抑える必要がある。植生による林床の被覆には、雨滴の衝撃の緩和や、表面流の掃流力軽減による土砂流出を抑制する効果があるため、伐採直後に植生を回復させることは重要である。しかし、植生による土砂流出の抑制効果を伐採後の植生再生過程に関連させて詳細に調べた事例は少ない。そこで本研究では、発達段階の異なる植生における土砂流出量を比較することで、土砂流出抑制効果を発揮する植生の発達段階を明らかにすることを目的とした。宮崎大学田野フィールドのスギ人工林で伐採試験を行い、土砂流出量、林床被覆率、植生の種類、高さおよび被度を測定した。また、伐採直後と伐採から約一年後の林地の様子を無人航空機(UAV)により撮影し、植生の発達の度合いと不均一性を複数時点で定性的に評価した。講演では植生発達と土砂流出および地形因子等との関係を分析したので報告する。

309 アカメガシワ種子のアリ散布と埋土種子形成との関係
鬼塚健太
(九大生資環)、玉泉幸一郎
アカメガシワは森林土壌の広範囲に埋土種子群を形成しており、これらは森林更新に貢献すると考えられる。地表面にあるアカメガシワ種子がアリによって運ばれること(アリ散布)が確認されており、この散布形態が埋土種子の形成に関与することが示唆されている。本研究では、アリによる種子の運搬を観察し、種子散布に関わるアリの種類について調査した。さらに、最も頻繁に種子を運搬したアリについて、巣の分布と巣中のアカメガシワ種子の垂直分布を調査した。アリ散布はほとんどがアシナガアリによって行われた。巣分布の調査を行ったプロットにおいては、90%以上の面積がアリの行動範囲に含まれた。アリの巣の中には、地表から10cm以上の深さに、地表面~10cmの深さと同程度の数の種子が存在していた。これらの結果は、アカメガシワのアリ散布においてアシナガアリが重要な役割を果たしており、アリ散布が埋土種子形成に空間的広がりを与えることを示唆している。