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スギ挿し木ペーパーポット苗における育苗方法の違いが育苗時の根系発達に与える影響
古里和輝
(宮大農)、平田令子、長倉良守、伊藤 哲
ペーパーポット苗は生分解性の容器ごと植栽が可能なため、コンテナ苗のように十分な根鉢形成を待たずに早期に苗を出荷できる可能性がある。しかし、演者らが行ったペーパーポット試験では、枯死率が高くなる傾向や長期間育苗で容器が劣化し培地が崩れるなど、ペーパーポットを用いた林業種苗の育苗方法にはいくつかの改善すべき課題があることが明らかとなった。そこで本研究では、育苗方法の違いが根系発達に与える影響を明らかにすることを目的とし、根系の発達段階の異なる当年生挿し穂と前年度秋に床挿しした挿し穂および1年生余剰苗の3品種をペーパーポットとコンテナへ移植し育苗する実験を行った。ペーパーポットは根鉢形成速度と容器劣化および生産性を考慮して容量の異なる3種類を使用した。本講演では各苗種の新規の発根と根系発達状況を比較した結果を報告する。

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マツ、スギおよびヒノキの肥大成長フェノロジーと材質との関係
保坂武宣
(九大農)、玉泉幸一郎
これまで、マツとスギの肥大成長フェノロジーについて研究を行ってきた。その結果、両樹の成長フェノロジーには差が認められ、スギはマツよりも早い時期に多くの材形成することが示唆された。このような成長フェノロジーの違いは、形成される木材の材質に影響を与えていると予想されることから、年輪の外観にその違いが反映されているどうかについて検討した。九大構内に生育する樹木を対象とし、2015年はスギ15本とクロマツ5本、2016年はスギ5本とクロマツ5本およびヒノキ5本について肥大成長を測定した。幹にデンドロメーターを取り付け2日から5日間隔で読み取った。さらに、2017年の9月に供試木を伐倒して測定部位の円板を採取した。採取円板とデンドロメーターのデータを用いて、年輪内における材の形成時期を特定した。これらの結果から、肥大成長フェノロジーと材質(年輪の外観)との関係について述べる。

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九州・四国地方における九州産スギ6品種の成長と樹形 -四大学演習林での植栽試験の結果-
榎木 勉
(九大農)、高木正博、鵜川 信、鍋嶋絵里
九州大学宮崎演習林(椎葉),宮崎大学田野フィールド(田野),鹿児島大学高隈演習林(高隈),愛媛大学米野々森林研究センター(米野々)に1968-70年に設定されたスギ品種試験地において,クモトオシ,ヤイチ,オビアカ,ヤブクグリ,メアサ,アヤスギ6品種の成長様式を比較した。樹高と胸高周囲長はクモトオシ,ヤイチ,オビアカで大きく,メアサ,ヤブクグリ,アヤスギで小さい傾向があった。品種間差は,最大樹高が大きな椎葉と米野々で大きく,最大樹高の小さい田野と高隈で小さかった。形状比や樹冠長率も椎葉と米野々において品種間差が大きく,樹高の大きな品種は形状比が小さく,樹冠長率が大きい傾向があった。樹高,枝下高,樹冠長,胸高周囲長,形状比,樹冠長率を用いて主成分分析を行った結果,第一主成分は樹高や胸高周囲長などの成長に関する変数との相関が高く,第二主成分は枝下高や形状比など樹形に関する変数との相関が高かった。