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南九州の壮齢照葉樹二次林における21年間の森林動態
平山知宏
(宮大農)、伊藤 哲、平田令子、光田 靖
薪炭林として管理されてきた広葉樹二次林の多くで、管理放棄による生物多様性の低下が問題となっている。このような二次林を多面的な機能を持つ森林へと誘導する上で、二次林から原生的な自然林への発達過程を明らかにすることは重要である。本研究では、発達途中段階の壮齢照葉樹二次林における階層構造および種組成の変化に着目し、過去21年間の森林動態を明らかにすることを目的とした。宮崎大学田野演習林内において原生的な自然林に移行しつつある94年生照葉樹二次林の固定試験地(面積1ha)で調査を行った。調査は、DBH3 cm以上の個体の樹種、DBH、階層、微地形、攪乱被害、位置を記録した。本調査地の主要構成種を中心に過去のモニタリングデータと比較することにより、階層構造、種組成の変化について分析した結果を報告する。

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森林施業がやんばるの森林植物群集に与える影響
安部哲人
(森林総研九州)、工藤孝美、斎藤和彦
沖縄県やんばる地方には多くの絶滅危惧種が生息する貴重な生態系が残されているが,伝統的に森林施業が行われており,生態系に与える影響が懸念されている.本研究では植物群集を対象に,生物種多様性が施業によって受ける影響を解析した.施業履歴は1930年以降伐採履歴がない森林を非皆伐林,1930年以降に伐採履歴がある森林を二次林と定義した.高木・亜高木層の種数は二次林より非皆伐林で種数が多く,低木層は二次林の種数が多かった.これは森林構造の発達プロセスを反映しているものと考えられた.伐採跡地の種数は少なく,外来植物が多く出現したが,絶滅危惧植物は非皆伐林で多くの種が出現した.これらの結果は,施業により固有の植物相が劣化することを示唆している.やんばるの生物多様性を保全するためには,絶滅危惧種の生育地である林齢の高い森林を残し,林齢の若い森林を中心に施業を行うなどの配慮が施業計画に求められる.

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沖縄島やんばる地域における天然林優占種の落下種子量の年変動
高嶋敦史
(琉大農)、金城孝則
沖縄島やんばる地域の森林は,生物多様性の高さや生態系の複雑さが評価されて2016年に「やんばる国立公園」に指定された。また,2017年には,世界自然遺産への登録申請も行われた。このやんばる地域の森林では,主にイタジイやイジュが優占する亜熱帯性常緑照葉樹林が広がっており,それらの落下種子量の年変動は森林の更新や野生動物の餌環境等に大きな影響があると推測されている。そこで本研究では,環境省のモニタリングサイト1000事業で実施されている「与那サイト」のシードトラップ調査のデータから,近年の優占樹種の落下種子量の年変動を取りまとめた。その結果,第1優占種のイタジイは,2009年に豊作,2010年に大豊作がみられたものの,その後2016年まで6年間豊作が発生していないことなどが確認できた。