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マルチプレックスPCR法による宮崎県のハイパーマツ黒採穂園のクローン管理
三樹陽一郎
(宮崎県林技セ)、上杉 基
宮崎県ではハイパーマツ黒のさし木苗生産が開始され、平成28年度は採穂園から約25,000本の穂木が採取されている。さし穂の発根能力は母樹が年齢を経るに従って低下するため、定期的な母樹の更新が必要となるが、その際は徹底したクローン管理を行うことが重要である。また、現地に植栽された採穂園由来のクロマツの生育状況を調査する場合、調査木のクローン確認が必要なことも想定される。そこで本研究では、第一世代抵抗性クロマツをベースに開発されたマルチプレックスPCR法を用いて、本県におけるハイパーマツ黒のクローン管理の可能性を検討した。今回は、林木育種センター九州育種場提供のオルテット73クローンについてDNA型を特定し、本県の採穂園母樹の各クローン1ラメートのDNA型と照合することを試みた。

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マツノザイセンチュウ抵抗性クロマツの開花と開葉フェノロジーの相関
松永孝治
(林育セ九州)、栗田 学、武津英太郎、倉原雄二、倉本哲嗣
マツノザイセンチュウ抵抗性採種園産種苗の遺伝的な能力は母樹及び花粉親の影響を受ける。様々な生物的・非生物的要因が採種園産種子の花粉親の構成に影響を与えるが,採種園構成木の開花フェノロジーもその一つと考えられる。開花フェノロジーは,雄花や雌花を着生する樹齢に達するまで調査できないため,新たに開発された品種を用いて採種園を設計する際に考慮することができない。しかしながら,もし開花と開葉フェノロジーの間に相関関係があるならば,若齢木の開葉フェノロジーから,開花フェノロジーが推定できる可能性がある。ここでは,マツノザイセンチュウ抵抗性クロマツのモデル採種園において,開花と開葉フェノロジーの関係を調べたので報告する。

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リュウキュウマツにおける時期別線虫接種試験について
玉城雅範
(沖縄県森研)、倉本哲嗣、松永孝治、栗田 学、渡辺敦史
沖縄県ではマツ材線虫病に対する抵抗性を有する抵抗性リュウキュウマツの開発に向けて取り組んでいるところである。しかし、アカマツやクロマツとは異なり、リュウキュウマツを対象とした抵抗性品種開発要領が確定していないことから、現行の実施要領に基づいてリュウキュウマツへの適用の妥当性を考慮すべきと考えられる。特に、沖縄と本州のフェノロジーの違いから、接種時期等についても検討する必要性がある。そこで、本研究では、複数の時期に線虫接種を行った場合に、家系毎に枯死木の発生時期や生存率に差があるかどうか、気温や降水量等の気象条件や苗高との関係を併せて確認したので報告する。

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異なる接種密度で接種したクロマツ樹体内におけるマツノザイセンチュウの頭数評価
山口莉未
(九大生資環)、松永孝治、渡辺敦史
マツ材線虫病は、宿主であるマツと病原体であるマツノザイセンチュウ(Bursaphelenchus xylophilus、以下、線虫)の相互作用が、生物的・非生物的要因である誘因を満たす条件下において発現することで引き起こされる。誘因の1つに接種密度があり、これまでも接種頭数が多いほどマツの枯損率は上昇することが報告されてきた。しかし、異なる接種密度で接種した場合の樹体内への侵入頭数およびその後の頭数の推移は不明であった。本研究では、高精度に定量評価することが可能であるリアルタイムPCR法により、異なる接種密度で接種した際のクロマツ樹体内における侵入頭数と頭数の経時的変化をそれぞれ評価したので報告する。