407
挿し木苗生産期間の最適化に向けた発根に必要な期間の検討
栗田 学
(林育セ九州)、倉本哲嗣、佐藤譲治、倉原雄二、大塚次郎、武津英太郎、松永孝治、渡辺敦史
九州地域において多くのスギ人工林は主伐期を迎え伐出量の増加が進んでいる。それに伴い再造林に必要な種苗の増産が求められている。一般的には春挿しや秋挿しなど特定の時期に挿し付けを行い種苗生産が行われているが、通年で挿し付けが可能でかつ挿し付け時期に応じて苗木生産に要する期間の最適化ができれば、種苗の生産性の向上とともに業務の平準化による労働生産性の向上も期待される。これまでに通年での挿し木苗生産の可能性について報告がなされているが、発根までに必要な期間についての知見は少ない。そこで、現在、我々は発根率の異なる9種類の系統を用い、時期別に採穂及び挿し付けを行い、定期的に発根調査を進めている。本発表ではそれら実験結果をもとに発根率と発根に要する期間の関係性について考察するとともに、種苗の生産期間の短縮の可能性について議論を行う。

408
成長に優れたスギ系統の植栽試験地における初期成長パターンの比較
倉本哲嗣
(林育セ九州)、栗田 学、武津英太郎、松永孝治、倉原雄二、千吉良 治、大塚次郎、佐藤譲治、竹田宣明
初期成長に優れたスギやヒノキのエリートツリー及び精英樹の利用は、育林・造林経費の約3割を占める下刈り回数を減らし、林業の省コスト化に貢献すると期待されている。一方スギさし木クローン苗では、植栽当年から成長を開始する系統や、1年程度を経過した後に成長を開始する系統が見受けられた。林業の省コスト化には、植栽後より早く成長を開始し、より成長速度が大きいものを利用することが良い。しかしこれら成長のパターンが植栽各地で変動するのか、また遺伝的要因によって決定されているのか検討した事例はほとんど無い。そこで本報告では、これまで設定してきた試験地におけるスギエリートツリー等のさし木苗の成長パターンについて検討したので報告する。

409
間伐が次世代精英樹候補木の選抜に与える影響 -九州育種基本区における検討事例-
武津英太郎
(林育セ九州)、松永孝治、倉原雄二、栗田 学、倉本哲嗣
九州育種基本区ではスギやヒノキの精英樹同士の人工交配家系により構成された育種集団林を設定しており、現在次世代精英樹候補木の個体選抜を進めている。集団林は周囲の同齢林分と同様の施業が行われることが多く、切り捨ての定性間伐が行われることも多い。育種集団林における選抜は間伐後に行われることもあり、間伐が次世代精英樹候補木の選抜にどのような影響を与えるのかを明らかにする必要がある。本研究では実データとシミュレーションの両面から検討を行った。実データでは間伐後に樹高の遺伝率・遺伝的獲得量が大幅に減少する事例が見られた。シミュレーションで異なる間伐方法を比較したところ、定性間伐は列状間伐と比較して遺伝率の減少幅が大きいことが示された。個体選抜時には間伐の影響を考慮する必要性が示された。

410
横打撃共振法によるスギ心材含水率推定値の時系列変化
倉原雄二
(林育セ九州)
スギは心材含水率のばらつきが大きく、製材品として利用する際に必要な乾燥が困難である。心材含水率のばらつきはクローン内では小さいことから育種による低心材含水率への改良が可能であると考えられている。一般に心材含水率は円盤採取により測定されるが、伐倒をともなうことから同一個体を繰り返し測定することが出来ない。横打撃共振法は推定精度はあまり高くないが、非破壊的な測定手法であることから複数年の測定やより短い間隔での測定を行うことが出来る。今回、九州のスギ第一世代精英樹に横打撃共振法を適用し、推定含水率の経時変化を調査したので報告する。