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スギとヒノキの根株の地上部と地下部の分解比較
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酒井佳美 (森林総研九州)、石塚成宏 |
倒木と根株、立枯木からなる「枯死木」は森林における二酸化炭素吸収量の算出が求められている炭素プールの一つである。根株は立木の伐採時に必ず発生する部分であり、その現存量が地上部バイオマスの25~30%に相当するとされるため、炭素貯留量として無視できない大きさである。根株は同一個体内でも地上部分と地下に埋まっている根とでは周辺環境が大きく異なっており、分解過程に違いがある可能性がある。しかし、これらを比較する研究例はほとんどない。そこで本研究では根株の地上部と地下部(直径5cm以上の粗大根)の分解の違いを明らかにすることを目的として、分解程度の異なるスギとヒノキの根株試料を収集し、根株の地上部と地下部の材密度、および全窒素濃度と木材成分濃度を比較したので報告する。 |
702 |
プロセルモデルを利用した九州のスギ林生産力のマップ化
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鳥山淳平 (森林総研九州)、橋本昌司、清水貴範、アレクシ・レートネン |
森林の光合成や蒸散、分解過程を数式化したプロセスモデルは、気候変動に対する人工林の応答予測のための有力なツールである。しかしながら、モデル内で指定するパラメータが多く、その推定手法が課題となっている。本研究はスギ人工林の観測データを利用し、ベイズ手法によるプロセスモデルのパラメータ最適化を行った。プロセスモデルはBiome-BGCを利用した。観測データは熊本県北部の鹿北流域試験地の2001-2003年のフラックス(GPP、呼吸)と、九州内3カ所の収獲試験地のスギの成長データである。最適化の結果、Biome-BGCの初期設定のパラメータと比較し、観測値の再現性は大きく改善された。さらにアメダスの1 kmメッシュ化データを利用し、九州のスギ林生産力のポテンシャルについてマップ化を行った。同マップは開発途中であり、今後は土壌特性等の広域情報を整備しながら改良を続ける予定である。 |
703 | 樹幹流が表面流に与える影響-表面流プロセスモデルによる検討- |
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山岸 極 (宮大農)、伊藤 哲、高木正博、平田令子、光田 靖 |
森林斜面における表土侵食に対して雨滴侵食が主要因であるとされてきたが、近年、表面流も寄与することが報告されている。表面流の発生には樹幹流が関連すると考えられる。演者らはこれまで樹幹流と表面流との関係を評価してきた。しかし、樹幹流と表面流は採水式の測定のため、同一場所での同時測定が不可能であり、樹幹流と表面流の関係の正確な評価が困難であった。そこで本研究ではプロセスモデルを構築し、表面流に対する樹幹流の影響の定量的な評価を試みた。調査は宮崎大学農学部附属フィールド科学教育研究センター田野フィールドの30年生ヒノキ人工林と広葉樹二次林において、ヒノキ、シイ類を対象に樹幹流および根元の表面流の計測を行った。さらに樹幹流の影響を除外した表面流として樹木の根元から離れた地点で表面流を計測した。講演では、樹幹流から表面流出にいたるプロセスの推定結果について報告する。 |