704
常緑広葉樹林と針葉樹人工林における水質形成作用の比較
高島靖文
(宮大農)、高木正博
森林内の渓流水質が健全に保たれることは、生態系や下流の環境にとって重要である。しかし、水質に影響を与えると考えられる要因は多く、水質形成のプロセスについては未解明な点が多い。本研究では、植生の違いが渓流水質に与える影響について明らかにすることを目的として調査を行った。調査は、同一斜面に常緑広葉樹林と針葉樹人工林が隣接する林分を対象とし、林内雨・樹幹流・土壌水・飽和側方流を採取した。期間は2016年9月からで、降水後に採水を行った。分析項目は溶存イオン濃度と有機態炭素で、溶存イオンはイオンクロマトグラフィー、有機態炭素はTOC計で分析した。分析した溶存イオン濃度や有機態炭素の植生による違いや降水量による変化を比較し、考察する。

705
立地条件の異なるスギとヒノキの硝酸同化能の比較
小田木 由紀
(宮大農)、高木正博
窒素は植物の必須元素の一つであり、森林生態系内において植物生育の制限要因である。植物は土壌中の硝酸態窒素を主な窒素源として利用しており、硝酸還元酵素活性(NRA)を硝酸同化の指標として用いることができる。植物の硝酸同化能に関する研究は多くあり、これまでに、植物の硝酸同化能には種間差があると報告されている。しかし、多くの研究は立地条件を統一していないため、種間差以外の環境要因が硝酸同化能に影響を及ぼしている可能性がある。本研究では、立地条件の違いを考慮しても植物の硝酸同化能は種間で差が生じるかを明らかにすることを目的とし、立地条件の異なる斜面上部と下部の両方で植物の硝酸同化能を測定した。宮崎大学附属田野フィールド演習林内のスギ人工林とヒノキ人工林を調査地とし、スギとヒノキの葉と細根を採取しNRAを測定した。これらの結果をもとに、硝酸同化能に対する立地条件と種間差の相互作用について考察する。

706 若齢の暖温帯常緑広葉樹二次林の林分現存量と成長量
秋本洋杜
(宮大農)、髙木正博
若齢広葉樹2次林での現存量と成長量を推定した。毎木調査により試験地内にはDBHが2 cm以上の樹種が62 種出現した。林分密度は6,098 本ha-1,平均DBHは4.2 cm、最大直径木はスダジイの16.2 cmであった。BA(胸高断面積合計)はスダジイが最も多く13.2 %で次いでタブノキが10.5 %であった。林分現存量は,DBHと乾燥重量の関係を試験地外で伐倒した15本の供試木を対象に求め,両者の関係式を用いて算出した。林分現存量は24.7 t ha-1となった。樹種ごとにみるとスダジイが最も多く全体の11 %を占めていた。一年間の成長量は4.7 t ha-1 y-1であった。スダジイとタブノキは日本の常緑広葉樹林の極相林を構成する主要構成樹種であり、両樹種が極相林で共存することが知られている。このことから、林分全体の24 %を占めていたスダジイとタブノキは今後さらに優占樹種として林分を構成していくと考えられる。また、林分現存量が24.7 t ha-1と低い数値を示したのはまだ若齢だからと考えられる。