501
針葉樹と広葉樹の水利用の違い
山下悠世
(九大農)、玉泉幸一郎
樹木の水移動は針葉樹では仮道管、広葉樹では道管がその役割を担っている。仮道管は管径が小さく通水性が低いのに対し、道管は直径が大きく通水性が高い。このために、針葉樹の通水抵抗は大きく、広葉樹では小さい。本研究では、通水抵抗の大きな針葉樹が水利用においてどのような補完システムを発展させてきたのかを明らかにすることを目的としている。広葉樹として4年生のアラカシとマテバシイ、針葉樹として4年生のスギとヒノキの各1本を供試した。それぞれにデンドロメーター、サップフローセンサーを設置し、幹の伸縮と樹液流速を測定した。このうち樹液流速は立木切断法によって流量に換算した。さらに、プレッシャーチャンバーを用いて水ポテンシャルの日変化を測定するとともに、単木のP-V曲線を作成した。これらのデータセットから広葉樹と針葉樹の水利用の違いを明らかにする。

502
スギ幼齢木5クローンの当年生シュートにおける成長期間中の水分特性値
石川達也
(九大生資環)、作田耕太郎、武津英太郎、栗田 学、倉本哲嗣
初期成長に優れた苗木の育成は、人工林における保育費用の削減に対して有効な手段であり、林業収益性の向上に資すると期待される。林業低コスト化の実現に向けてスギ精英樹第二世代候補木の特性評価が行われつつあるが、精英樹間での生理的特性の差異について比較した例は少ない。本研究では、林木育種センター九州育種場(熊本県合志市)内に植栽された、スギ精英樹第一世代と第二世代候補木の当年シュートについて成長期間中の水分特性値を測定した。水分特性値の測定はクローン間で初期成長量に差が認められている6~7年生の5クローンを対象とし、プレッシャーチャンバーを用いたP‐V曲線法によって行った。これらの測定を5月~10月までの各月に1度行い、クローン間での当年シュートの水分特性について比較、検討を行う。

503 稈齢にともなうマダケ当年葉の光合成機能とケイ酸含有量
大原 遼
(九大生資環)、作田耕太郎
近年、管理放棄された竹林の周辺林分への拡大が問題視されている。竹林の拡大に適切に対処するためには、タケ類を生物学的に理解することは重要であると考えられる。タケ類は毎年新しい稈を発生させ、複数年にわたって同一の稈を利用するという特徴を持つ。また、イネ科の植物は土壌中のケイ素をケイ酸の形で吸収し、体内に蓄積することが知られている。タケ類はイネ科に属し、肥大成長を行わないことから、同一の稈を複数年にわたって利用する間に過剰なケイ酸が稈や枝、葉などに蓄積すると考えられる。過剰に蓄積したケイ酸は水分通導性の低下などを引き起こし、葉での光合成など地上稈の生理的機能に多岐にわたって影響を与えると考えられる。本研究ではマダケを対象とし、梅雨前に発筍した新竹の葉および春先に付け替わった前年以前に発生した稈の新葉に着目し、光合成速度とケイ酸含有量について測定を行い、比較検討した。