504
葉の開葉フェノロジーと道管形成時期との関係
大西裕子
(九大生資環) 、玉泉幸一郎
環孔材樹種では通水が当年の道管で行われるため、葉の開葉に先だって道管が形成され、散孔材では通水に古い道管が使用されるため、道管形成の前に開葉が起こるとされている。しかし、これまで、それらのタイミングを精度よく計測・評価した研究はみられない。本研究では、肥大成長と開葉のフェノロジーを同時計測することで、これらの相互関係を明らかにすることを試みた。環孔材樹種としてアカメガシワ4本、コナラ4本、センダン1本、散孔材樹種としてオオシマザクラ1本(4箇所)、ソメイヨシノ4本、ムクノキ1本、および放射孔材としてアラカシ4本、マテバシイ1本を供試した。供試木の高さ1 m地点に自記デンドロメーターを設置して肥大成長を1時間に1回収録し、同時に、自動カメラでその上部の葉を撮影した。さらに、測定木からサンプルを採取し道管の分布状況を調べた。これらの結果から、道管配列の違いと開葉フェノロジーとの関係について議論する。

505
ソメイヨシノの花、葉、幹成長のフェノロジーとシュートにおける炭素分配
久代佳緒里
(九大農)、玉泉幸一郎
樹木の各器官の成長フェノロジーは相互に関連していることが想定されるが、これらの関係を扱った研究は少ない。本研究では、ソメイヨシノを対象として、花、葉、幹の成長フェノロジーの相互関係を明らかにすることを目的とした。さらに、ソメイヨシノは花への炭素分配が多いと予想されることから、シュートにおける花、葉、幹への炭素分配特性を明らかにすることを目的とした。花と葉については、自動カメラにより1時間に1回の撮影を行い、画像解析により開花から落花まで、および開芽から開葉までのフェノロジーを明らかにした。また、幹については、デンドロメーターで肥大成長フェノロジーを明らかにした。炭素分配特性については、9本のシュートを選び、各シュートにおける満開時の花、展葉後の葉、成長休止後の幹のバイオマス量をそれぞれ測定した。これらの結果から、ソメイヨシノの成長フェノロジー特性と炭素分配特性について報告する。

506
スギの伸長成長開始に及ぼす気温の影響
岡田鈴実
(九大生資環)、玉泉幸一郎
" 地球温暖化の進行は樹木の成長開始時期に影響を与える可能性がある。樹木の成長開始は積算気温によって決定されると考えられているが、我が国で最も多く植栽されているスギについての成長開始と気温との関係はほとんど知られていない。本研究においては、冬期にスギ苗木を異なる温度条件下に置くことで、温度反応に由来する伸長成長開始の違いを明らかにすることを目的とした。鉢植えの1年生スギ苗を供試し、15℃、20℃、25℃の3つの温度条件(制御環境)で生育させた。各温度条件の部屋に2016年11月30日と1月26日にそれぞれ4本ずつを搬入した。また、野外条件で生育させた4本も対照区として用いた。用いた苗木の総数は28本であった。また、各処理区における気温を温度センサーで記録した。供試木の主軸と側枝の伸長量を2日から3日間隔で測定した。これらの結果から、スギの伸長成長の開始に及ぼす気温の影響を考察する。 "

507
スギの肥大・伸長成長開始と樹体の生理状況
玉泉幸一郎
(九大農)
樹木の成長フェノロジー研究は、それぞれの器官で単独で行われることが多く、他の器官との相互関係や、樹木の生理状況との関係が議論されることは少ない。本研究では、スギの成長開始期における樹体の生理状況を明らかにすることを目的とした。本研究では樹体の生理状況を知る指標として樹液流速を用いた。苗畑に植栽された4年生(2009年現在)シャカインスギの6本を供試し、2009年から2014年まで肥大成長、伸長成長、樹液流速、および温湿度を測定した。肥大成長は自動デンドロメーターで1時間に1回、樹液流速はThermal Dissipation Probe(Dynamax社)を用いて5分に1回収録した。温湿度はおんどとり(TR52)により10分間隔で収録した。伸長成長は1週間間隔で定規を用いて測定した。これらの結果から、肥大成長や伸長成長の開始日および樹液流速の年変動、さらに、成長開始と樹液流速との関係について述べる。